Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その3)

商標の概念(その2)・・・商品又は役務についての使用

「標章」の概念に続いて、「商品又は役務についての使用」です。

ここは、

  1. 「商品又は役務」についての使用
  2. 商品又は役務についての「使用」
  3. 商品又は役務「についての」使用

と分けて説明しています。文理解釈的です。

 

「商品又は役務」についての使用

値段、発行日などは、目印ではないので、標章ですらない。

商品又は役務に関するものではないので、地方公共団体のマーク、市章、任意団体のマークは、商標ではない。

会社の社章や商号も商標ではない。

但し、これはは、重なり合う場合があるとします。

 

●商品又は役務についての「使用」

2条3項各号を列挙して、説明しています。

もっとも典型的な商標使用は、商品自体に標章を表出したラベルを貼付すること、刻印することあります。また、標章を表出したタッグを紐でつけること、石鹸など商品自体を標章の形状にすることとあります。

 

商品未収納の包装紙に商標を付している場合は、37条の間接侵害の対象物となるとあります。この関係で、百貨店の包装紙が偽造されたときは、商品との関係が不明確ですが、37条の間接侵害の対象物にすべきとします。そして、現在は、小売役務が認められたので、こちらで百貨店の包装紙は、小売等役務商標として保護されるとします。

 

偽造品の製造者は「付する行為」をしており、販売者は「譲渡」等をしていますが、倉庫に保存する行為は、間接侵害という説と侵害という説があり、小野先生は侵害説です。「譲渡」等の行為の一環を形成する行為と解するためとあります。

 

(ここに面白いことが書いてあったのですが、「間接侵害」行為は軽微な行為であり、間接侵害行為非処罰説というものがあるそうです。民事のみで、刑事は対象外という考えのようです。製造者は有罪で、保管者が無罪では、不均衡として、間接侵害行非処罰説には反対とあります。)

 

「輸入」については、吉藤説(単に保税地域内にある貨物は輸入物とは解すべきではない)は、正常の貿易取引における輸入の解釈であり、偽造品の場合は、領海説、陸揚げ説によるべきとします(偽造品摘発においては領海説だそうです)。

 

「広告」については、音声を用いてする宣伝行為は、商品に標章を付したとはいえないが、侵害については、商標の価値の毀損として、商標品侵害と解する余地があるとします。

 

●商品又は役務「についての」使用

「名刺」で商標自体を広告しているのであって、「商品又は役務の広告に標章を使用している」ことにならない(ヨーデル事件)とあり、名刺での標章の使用は、商標の認知度を高め、間接的に企業活動に資するため、広告を名刺で行っているのであって、商標法上の「商標の使用」ではないとします。便箋も同じで、単なる標章のみの広告は、2条3項8号の商標とは認められないとします。

ただし、名刺に商品写真が掲載されているようなものは、商品の広告であり、商標が使用されているとします。

 

コメント

名刺についての標章の使用は、商品又は役務との関係が明確ではないので、標章の使用があっても、商標にあたらないというヨーデル事件ですが、本当に、すべての事案でそうすべきなのかなと思いました。

SONYTOYOTAのような商標の場合、当該企業が何の商品又は役務かは、消費者は認識しいているので、その消費者の認識を前提にすると、商標権侵害と構成しないといけないケースがあるように思いました。

ヨーデル事件、ちょっと見て見ないといけないですね。

 

よく、企業そのものの表示と、商品・サービスの表示は、違うんだという意見を商標だけをやっている人は言いますが、ブランドマネジメントや世間からすると、商標の人は意味の分からないことを言うと思うのではないでしょうか。

現在のブランド論では、コーポレートブランド(企業ブランド)が重視されています。名刺、封筒、企業の建物の看板、ブランドだけの広告(甲子園球場の広告はブランドロゴだけです)が、標章であっても、商標ではないというのは、簡単には納得できません。

 

商標法上の商標は、標章であって、商品又は役務に、使用して、はじめて商標になるのというのは、侵害論では良いのですが、社会通念上は、そこまで、標章と商標の区別ができていません。

判例でも、教科書でも、標章と記載すべきところを、商標と言ったりしているので、この基本的なところが、商標法を分かり難くしているのではないかと思いました。

 

商標の定義規定を置くとしても、それは文字とか図形とか音とか、構成要素の話だけに限定して、「使用」は権利の範囲に関するものとして、商標とは別に定義する方が良いのではないかと思ったりします。

 

標章と商標の使い分けは、イギリス法から来ているのだと思いますが、アメリカ法やEUTMではどうしているんんでしょうか?