Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その5)

立体商標

標章は、標識の一つであり、標識には、視覚を通じて捉えらるものの他、聴覚、嗅覚・味覚・触覚で捉えらるものも標識としての機能を果たすことができる。しかし、動的商標や音響商標はまだ商標法上の商標とは捉えられいない(※当時)。

 

米国からスタートし、欧州各国など立体商標を認める国が増え、書評制度の国際的調和のために、平成8年で立体商標制度が導入された。

 

立体商標の運用には、識別性が重要であり、商標審査基準には、「指定商品の形状(指定商品の包装の形状を含む。)又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎない商標は、本郷の規定に該当するものとする。」としている。

 

商標法の保護が永久権であるのに対して、製品等と相対的な特徴がある程度で立体商標登録を認めると、現実には意匠法と重畳保護され、意匠法による保護制度そのものの存在意義を問われかねない。指定商品やその容器の機能的・不可避的な立体形状そのものである場合には不登録とする厳しい運用が必要不可欠をしないと、産業発展の邪魔になり、公正かつ自由な競争秩序をかえって訴外するおそれがあり、商標法1条の立法目的に反するというのが、理由のようです。

 

そのため、商品の形状等の場合は、3条1項3号に該当するとされるものも多く、審判でも認められずに、審決取消訴訟に継続し、裁判で登録になった例が多数あります。

登録にならなかったものとしては、

  • ギター用駒の形状事件
  • ひよ子事件

などです。

 

立体商標のための規定も多数あります。

  • 特別な不登録理由として、4条1項18号(不可欠な立体的形状のみからなる商標」を不登録理由とする)ができ、3条2項で識別力が生じても登録できないと解釈しています。
  • また、商標権の効力が及ばない範囲が改正され(26条1項5号)、不可欠な立体的形状のみからなる商標は、使用しても侵害追及されることもありません。
  • 権利調整規定も、従来の意匠や著作権のみならず、特許や実用新案まで及んでいます(29条、意26条)。
  • 特許権存続期間満了後の立体商標の使用をする権利(33条の2)の規定もできました。

 

立体商標の類否判断は、立体商標同士の類否の他に、立体商標を特定方向からみたものと平面商標でも類否判断するとあります。

 

コメント

この本の初版の出版時は、いわゆる新しい商標はまだ登録できず、立体商標の登録は可能という時期でした。そのためか、立体商標については丁寧に説明があります。

 

小野先生が、「標章」の前に「標識」を認識しているのは、立体商標の説明のためだったようです。

 

平成8年の法改正のときは、知財協会の商標委員会のメンバーだったので、議論なども聞いたことがあります。

最近の新しい商標の法改正に比べると、立体商標は、非常に丁寧に、立体商標の条文を作っているなという印象があります。

 

新しい商標では、他の法律との調整がすくないという点が、立体商標との違いでしょうか。

 

昨年、話題になっていた「店舗の外観・内装の保護」が立体商標をベースに運用されるようですので、このあたりが現代的な論点でしょうか。

https://www.jpo.go.jp/faq/yokuaru/trademark/rittai_faq.html

 

しかし、コメダ珈琲の店舗を商標出願するとして、アワリーで検討費用はもらうとしても、本気で取り組んだら、数十時間で済むかなと思います。

商標だけでも、先行事例調査、特徴の把握、出願する商標の決定、図面の書き方(実線と破線)、商標の詳細な説明の記載、などがあります。

 

意匠で出すか、商標で出すか、双方で出すなら、双方の法律に従った準備が必要になります。

 

これは、大変だなと思います。