政府見解
2020年6月19日の日経(夕刊)に、契約書への押印は必ずしも必要ないという政府見解を政府が示したという記事がありました。
新型コロナ:「契約書のハンコ不要」、政府が見解 対面作業削減狙う :日本経済新聞
- 押印でなくてもメールの履歴等などで契約を証明できると周知する
- 押印のための出社や対面作業を減らし、テレワークを推進
- 内閣府、法務省、経済産業省の連名で法解釈についての文書公表
- 特段の定めがある場合を除き、押印しなくても契約の効力に影響はないと明記
- 契約が成立したと証明するには、メールの本文、送受信履歴、契約当事者の本人確認できる身分証明書の保存などのが押印の代替手段
- 民事訴訟法は、契約書などの文書が正しく作成されたことを推定する手段として、本人や代理人の署名や押印を挙げている
- 実際は押印以外も裁判所の判断材料になるため、押印は必須ではない
コメント
3省の連名の「押印についてのQ&A」は一読する価値があるようです。
http://www.moj.go.jp/content/001322410.pdf
代替手段として記載されているのは、次です。
① 継続的な取引関係がある場合
取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の保存(請求書、納品書、検収書、領収書、確認書等 は、このような方法の保存のみでも、文書の成立の真正が認 められる重要な一事情になり得ると考えられる。)
② 新規に取引関係に入る場合
契約締結前段階での本人確認情報(氏名・住所等及びその根拠資料としての運転免許証など)の記録・保存
本人確認情報の入手過程(郵送受付やメールでの PDF 送付) の記録・保存
文書や契約の成立過程(メールや SNS 上のやり取り)の保存
③ 電子署名や電子認証サービスの活用(利用時のログイン ID・ 日時や認証結果などを記録・保存できるサービスを含む。)
③は良いとして、
①②の場合について、次の説明もあります。
(a) メールにより契約を締結することを事前に合意した場合の 当該合意の保存
(b) PDF にパスワードを設定
(c) (b)の PDF をメールで送付する際、パスワードを携帯電話等 の別経路で伝達
(d) 複数者宛のメール送信(担当者に加え、法務担当部長や取締 役等の決裁権者を宛先に含める等)
(e) PDF を含む送信メール及びその送受信記録の長期保存
メールの保存はできたとしても、身分証明書を下さいとはなかなか言えません。
運転免許証などの本人確認情報は、新規取引用という整理のようです。まあそうでしょうね。
アメリカの商標出願では、従来は願書フォームにサインが必要でしたが、最近は署名権限者が氏名をタイプして、それをその人のメールアドレスから送信することで、署名自体は不要というものがあるようです。
アメリカの商標実務では、サイン済みのPDFファイルを送るだけで良いのですが、
- PDFの願書フォームに電子的なサインの画像を貼付しているだけののか、
- プリントアウトした願書フォームに実際にサインをして、それをスキャンしたものなのか、
どちりか、よくわからないものも多いので、それなら一層、本人のメールアドレスから送信していれば、それで良いという発想であり、上記の「押印についてのQ&A」と近い発想です。
もう一つ、日経に次の記事もありました。印章、印影、印鑑の説明が、参考になりました。
- 「印章」とは、印を押す道具そのもの
- 「印影」は、印章を紙に押印したときに残る印の形
- 「印鑑」とは、市町村等の役所(広い意味では銀行等金融機関も含む)に登録・保存された印影のこと