Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その15)

商標の登録要件

積極的要件(3条)

商標の登録要件は、3条の積極的要件と4条の消極的要件とに区分けして説明されています。

そして、3条は、

  1. 自己の業務に使用する商品又は役務について使用をする商標であること
  2. 識別性

の2つに分けています。

1.は更に、(1)商標使用の意思と、もう一つ、団体商標の関係で(2)自己の業務についての使用を説明しています。

 

条文上、「使用をする商標」とあたかも現在使用をしている商標であるかの表現がされていますが、これは立法経過から、将来使用しようとする場合も含まれており、異論がないあります。

 

使用意思は、その意思が表示されているだけでは不十分で、将来的に使用する蓋然性があるのことが必要で、不使用取消の3年を超える将来使用のための、ストック商標は適法でないとします。

しかし、主観的な意思は審査が困難であり、ストック商標が存在するが、本来的に認められないとします。

 

そのあと、使用意思を審査する審査基準の説明となります。

 

コメント

小野先生は、ストック商標(貯蔵商標、防衛商標)は、不適法と言ってます。ストック商標は全体の半分以上ではないかと推測しますが、登録主義の欠点が出るところです。

 

不適法と違法は微妙に違いますが、ストック商標だから、3条1項柱書違反で、無効になるという事例の紹介はありません。

しかし、現実には不使用取消はあっても、ストック商標だから無効はないようです。

 

もし、一つでもそのような判例があれば、この条文は、スーパー重要な条文になります。米国で、Naked Licenseが登録無効になるので、ライセンスでは品質管理が必須になったように、日本の商標法の運用を変えることも可能です。誰か、そんな判例を作ってくれないかなと思います。

 

反対に、相当オールドファッションな方法であり、あまり最近は聞きませんが、企業の商標管理では、自社の商標の一文字違いの商標を出願しましょうとか、推奨されたりします。

 

これは、日本の商標法が、著名商標の類似範囲と、あまり知られていない個別商標の類似範囲を同じ範囲としていることにも原因があります。

素直な認識では、類似範囲は商標の著名性により、可変なもので、著名商標の混同を生じる類似は広いのですが、その解釈は、日本の商標法の解釈上は無理があり、4条1項15号に行ってくださいとなるようです。

そうなると立法論となり、15号を廃止して、実際の混同で11号をみて、11号と15号を一つにするということになります。

 

もう一つ、商品の話があります。使用主義であれば、実際に使用している商標であって、実際に使用している商品・役務について出願されます。

 

最近のアメリカは、更新時などの登録後の使用宣誓で、抜き打ち的に徹底的な審査があり、指定商品が10個あって、実際に使用しているのが5個なら、後の5個を削減するような運用をしています。使用チェックの厳格化です。

米国の商標弁護士などは、非常に誇らしいものとして、この運用を紹介しています。大変であるが、制度の趣旨に沿った運用であるという認識のようです。

 

一方、日本でも、平成8年の改正のときに、タイの指定商品を一定数(例えば10個まで)に絞り、それ以上は一品いくらで料金を徴収していくことが検討されたことがあります。結局、実現しなかったのですが、先願登録主義になるとどうしても、実際に使用しない広い指定商品を出す人が多く、それが一つの問題になります。

 

料金に差をつけるというのものどうかと思いますが、不使用取消だけが使用チェックというのは関所が少なすぎると思います。

 

ドイツでも、相対的拒絶理由は、異議待ち審査ですが、異議をするには使用証拠の提示が必要です。

また、ドイツでは不使用商標では権利行使できません。

このような条文とセットでないと、3条1項柱書の運用と50条だけで、使用義務を語るのは無理があると思います。