4条1項1号から6号
絶対的不登録理由の1号から6号の箇所を、順番に読んでみます。
- 国旗等(1号)
- 同盟国紋章等(2号)
- 国連標章等(3号)
- 赤十字標章等(4号)
- 監督証明用印章(5号)
- 公共機関標章(6号)
1号~6号までは、似た規定です。
すこし注目したのは、6号の「ISO-Mount-Extender」事件(知的高判平成21年5月28日)です。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/651/037651_hanrei.pdf
「ISO」という国際的な公益団体の著名な名称と類似として拒絶されていますが、ISOを含んだ商標など、世界には沢山あるという主張が認められなかったようです。
コメント
1号から6号までですが、商標審査基準が改正され、事例にビジュアルが入ったところです。
その2号~5号までですが、通商産業省告示昭和●●年第●●号とありますが、審査基準にある表示を検索しても出てきません。どこで調べることができるのでしょうか。
通常、商標の使用開始は、特許庁の審査完了を待てませんので、民間の弁理士の商標調査が重要になります(※)。そのとき、上記の通商産業省告示が整理された状態で提示されていないとすると、明確な商標調査ができません。
現在のように、識別性と類否を中心に審査するのなら、これらの規定があまり出る幕はないのかもしれませんし、紋章や記章は、複雑なものが多いので、抵触することが少ないのかもしれませんが、気になりました。
1号の国旗は良いとして、2号~5号の紋章、記章、国際機関の名称(WHO、WIPO、UNESCO)など、通産省告示を番号で検索したり、色々やってみましたが、どこにあるのか分かりませんでした。経験と勘と感覚で判断するしかないのでしょうか。審査官は資料としても持っていると思うので、ちょっと情報公開が少ないかなと思いました。
さて、ISO関係の判例ですが、こちらは、通商産業省告示とは特に関係ありません。
著名なものという点ですが、どこで線引きするのかという点が論点なんでしょうが、ISOは著名でしょう。
そして、本判例ですが、ISOは著名なのですが、論点は同一又は類似です。
ISOを含んだ商標を、Global Brand Databaseで見ましたが、日本でもISOを含む商標が何件かは登録になっているようなので、なぜこの件は拒絶になるのか考えました。ハイフンであるか、半角スペースでるかなどの微妙な違いが、結論の違いになっているんだろうと思いました。
※ 脱線しますが、登録主義法制の考え方として、審査がサーチをして、審査をパスした商標だけを使いなさいという考え方があります。弁理士の商標調査は、完全ではありません。審査官の審査をパスしない商標は、使用してはいけないという考え方です。
審査をパスしていない商標を使用するなんて、信じられないという審査官経験者もいます。
昔、商標の仕事を始めたころ、商標の審査は2年以上はかかっていました。当然ですが、製薬会社や自動車会社を除き、通常の企業がそんなに待つことはできません。
企業の商品発売のライフサイクルを考えると、待てるのは3ヶ月ぐらい、長くて半年です。
このことから、登録主義が成立するのは、3ヶ月~半年ぐらいで審査が完了することが必要と言われます。少し前は、4ヶ月ぐらいで、登録主義のメリットが出始めましたが、今のように14ヶ月となると、もう登録主義のメリットはありません。無審査にすべきという主張が出てきてもおかしくありません。