4条1項7号(と19号)
7号(公序良俗違反商標)は、次の例があります。
- 「征露丸」
- 「特許理工学博士」など、多くの博士号入り文字商標
- 「特許管理士」
- 「出版大学」
本号については、今、世界的に問題になっている「悪意の商標」が関係します。
「悪意の出願」:健全な法感情に照らし他人が優先的な使用権限を有すると認められる商標を先回りして登録出願した商標」(渋谷教授)
これまで、外国周知標章の日本での冒認登録の未然防止のため、7号が積極的に運用されていたが、その点は、平成8年法改正で、19号を作ったので一応解消された。
7号については、「商標の構成に着目した公序良俗違反」型と「主体に着目した公序良俗違反」型があるが、後者は私的領域の問題であるとして、原則として7号の問題ではないとする判例がある(モズライト事件、CONMAR事件)。
しかし、ユベントス事件では7号の適用を否定するものの、ターザン事件では7号の適用を肯定するなど、方向性は収束していない。
(19号(著名商標の保護):相対的不登録理由)内容:周知+不正の目的
趣旨:従来7号で対応してきた外国で周知・著名な商標の保護を、独立の不登録事由としたもの。
コメント
7号の審査基準には、小野先生の本にあった「〇〇大学」「〇〇士」の他に、周知・著名な歴史上の人物名、国旗(外国のものを含む)の尊厳を損なう図形の他、新しい商標との関係で、救急車サイレン音、国歌(外国のものを含む)なども入っています。
歴史上の人物についての議論があったように思ったので、商標審査便覧を見ていたのですので、Juventusの事件についての説明が本書の説明とは違った説明で出ています。
http://www.lexia-ip.jp/Papers/yamada/paper_yamada_koujyo.pdf
この判例、裁判所のWebサイトでは公表されていません。判例時報を見ないといけないようです。裁判所のWebサイトに掲載されていないということは、先例的意味は少ないということなのでしょうか。
別の知財管理誌に出ていた山田威一郎弁護士のJuventus事件の解説は、本書と同じです。そうなると、商標審査便覧の方が、判決の結論とは違った、一般論だけを引いてきているということのようです。
http://www.lexia-ip.jp/Papers/yamada/paper_yamada_koujyo.pdf
さて、
19号はまた後で見るとして、7号はそのタイトルの公序良俗違反というものを扱った条項ですので、絶対的不登録理由です。しかし、そこから枝分かれした形で、平成8年に導入された19号(著名商標の保護)は、相対的不登録理由とされています。
これは、どうしかことかと思ってしまいます。7号は、総括条項で、絶対的不登録理由や相対的不登録理由という区別を超えて、他に行き場のないものを、ここで拾って解決する機能があったということでしょうか。
総括規定というなら、4条1項の最後になっても良さそうですが、7号という中途半端に場所にあったのかは、気になります。
あまり大々的に示して反感を買うのをおそれたためでしょうか。