混同的商標(15号)-相対的不登録事由
15号は、10号~14号までの総括的規定で、私益保護の規定とされる。不正の目的を除き、除斥期間の適用もある(47条)。
旧法は、これを公益的性格のもとしており、私益的規定と重複適用できるとしていた。そのため、「10号から前号に掲げるものを除く」には、重複適用を認めるべきという批判がある(豊崎)。
また、著名商標の場合は、商品又は役務の類似範囲を超えて、競業関係のない場合にまで適用される。
ただ乗り(フリーライド)、希釈化(ダイリューション)が、「混同を生じるおそれ」がある商標とする判例に、「ポロ事件」があり、
更に、親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係の営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(広義の混同)を含むという判例に、「レール・デュ・タン」最高裁判決(審決取消請求事件)がある。
広義の混同を拡大することについては、第三者の商標の選択の範囲を狭めるという問題もある(ガールズウォーカー事件)。
破産企業でも、著名性が継続する場合もある「VAN事件」。
判例の紹介が多数あります。
15号の適用を肯定したものに、
「ジャイアンツ」(清涼飲料)と「ジャイアンツ」(野球チーム名称)、
「みずほ」(工業所有権に関する手続きの代理又は鑑定等)と「MIZUHO」「みずほ」
などがあり、
15号の適用を否定したものに、
「ポラロイド」と「POLA」
「CITY」と「CITYスーパーステップ」
「KDDI Module inside」と「intel inside」
があるとします。
「力王」は、飲食物の提供では15号が適用され、金属製の建築又は建築専用材料では否定されています。
これは、取引者・需要者の捉え方と、払われるべき注意力の認定に影響されたものとあります。
コメント
だいぶ以前に、以前の会社で、意匠の責任者に紹介され、「力王」の知財の方とお話しをしたことがあったのですが、相当頑張っておられるという印象を持ちました。恥ずかしながら、当時は足袋の「力王」を知りませんでした。
15号は、異議や無効審判で当事者系のものと、拒絶査定不服審判系の査定計のものがあると思いますので、判例なども細かく見ないと何とも言えないのですが、重要な条文です。
強い商標(ブランド)は、商品力やマーケティング力(広告を含む)が作るものと言いますが、商標管理が作る面もあります。
強い商標を持つ会社の商標管理は総じて強く、徹底していることが多いように思います。商標管理とブランド力(ブランド価値)には、正の相関関係があり、商標管理が弱い会社では、強いブランドは作れません。
異議や無効で徹底的に争う姿勢を維持するのは、体力的にも大変ですが、これができる会社だけが、自由主義の世の中で生き残れます。行政庁が、11号を適用してくれるので、それを期待するということだけでは生き残ることは無理があります。
昔は、商標公報をどの会社も取っていて、分類を超えて、チェックをしていました。日本、米国、中国ぐらいですが。
それが、だんだん、クラリベートアナリティクスのWatching Reportになり、それは分類単位で料金が変わるので、主要分類しかとらないとなります。
しかし、これでは、戦う姿勢が維持できません。
中国などは、代理人がサービスで類似商標をチェックして送ってくれますし、欧州でもWatchingをしてくれるからこの代理人と指定があったりします。
生きぬくためには、多少のコストや手間は必要です。放置すると、どんどん商標が弱くなります。
商標管理のコストに、広告宣伝投資の1%かけている会社は、どの程度あるでしょうか。
1000億円の広告宣伝費を持つ会社があるとして、10億円の商標管理費用を持っている会社は、あまり聞いたことがありません。