Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

国際経済訴訟の対応強化

外務省が専門課設置

2020年7月30日の日経に、外務省が経済局と国際法局に分かれていた国際的な経済訴訟の体制を国際法局のもとに統一し、「国際経済紛争処理室」を設置し、また、民間からも人材を登用する方針であるという記事がありました。

国際訴訟の体制強化、外務省が課新設 韓国に敗訴契機: 日本経済新聞

  • 民間人材にも、国家間の経済紛争の舞台で英語を使った実務で活躍してもらう
  • 長期的にWTOの上級委員会など国際的なポストでを担う人材を育てる狙い
  • 韓国の日本産水産物の輸入規制でのWTO上級委員での逆転敗訴など
  • 外務省の組織を強化、経済産業省、農林水産、国土交通など各省との協力
  • 対韓輸出管理厳格化は、WTOに提訴され、近くパネル設置
  • 他に、韓国の造船企業への公的支援の2国間協議
  • オースラリアとの調査捕鯨の条約違反のICJの訴訟

コメント

30年ぐらいまえ、まだ大学生だったころ、出身大学はなぜか国際法に優秀な先生が多く、お一人が大陸棚とかの海洋関係の国際法の問題だったと思うのですが、外務省に請われて支援をしていると授業で云っておられたことを思い出しました。

当時は、大学の先生に協力を仰ぐというものだったのが、現在は、民間人材を登用というものになっているだなと思いました。

 

確かに公募などすると、面白い人材も集まるかもしれません。人生の一時期を外務省で、経済紛争の対応をしたなど、その人のキャリアにとっても、悪くないように思います。

 

では外務省は、どんな人材を想定しているのかなと思いました。

民間企業の人材の場合は、通常は出向ということになると思いますが、出向の場合、期間が限定的ですので、将来のWTOのパネルに選ばれるような人材という点では、出向では無理です。

 

法的な問題に詳しい人となると、弁護士です。渉外弁護士で、優秀な方は沢山おられると思いますが、そもそも給与が高そうです。

渉外弁護士の卵である、司法試験に通ったばかりの人を雇い、海外出張や外国の大使館・領事館での研修なども組み合わせて、育成するならありだと思いますが、時間がかかります。

 

実は、企業でも大学の法学部を出た人が、法務パーソンとして優秀かというとそうでもないという意見を聞いたことがあります。

経済学部や経営学部を出た、柔軟な発想のできる人材は、紛争でも強く、法律だけしかしらない人間は、法律のことばかりで、企業法務の中では、期待されていなかったりするという意見です。

 

企業勤務の弁護士で、弁護士資格のない法務パーソンよりも、相当に出来の悪い弁護士さんの話も聞いたことがあります。この方は特別なのかもしれませんが。

 

何れにせよ、ある程度の予算で、出向ではない人材で、優秀な人材を、中途入社的に外務省に入れ、育成していくというのは、なかなかに難しいことではないかと思いました。

 

折角できた国際経済紛争処理室ですが、経済産業省の模倣品対策室が特許庁に移管されたように、発展的に解消されるようなこともありえます。

民間人にとっても、役所に採用してもらうのは、チャレンジだなと思いました。