Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その42)

判定制度

判定制度は、旧法の確認審判制度に替わるもの。旧法の確認審判制度には法的拘束力があるかどうか説が分かれていたが、裁判所に不服について出訴できた。

一方、判定は法的拘束力はないとされ、一事不再理の適用もなく、出訴することもできない。

専門官庁のなすサービス的な鑑定的行為であり、行政処分ではない。

行政不服審査法による審査請求もできない。

 

先使用権の不正競争の意思がないことや、需要者の認識を認定する普通名称化は、証拠調べ手続きがない判定では行わない方が妥当であり、条文には商標権の「効力」について判定をなす旨規定があるが、実際に行わていない。

 

判定は行政処分ではなく、事実行為、公の鑑定的事実行為にすぎない。行政処分とするなら、旧法の確認審判手続きより手続き的に煩雑なものにしなければならず、手続を簡易化して訴訟によらずして紛争を解決する機能を持たそうとした改正目的と異なってくる。

 

審判は3名の合議であり、審判官の除斥もあり、書面審理が中心であるが、口頭審理もある。

 

判定に近いものとして、鑑定嘱託制度(28条の2)ができており、裁判所から商標権の効力について、3名の審判官が指定され、鑑定をする。

これに対しては、司法への実質的な影響は大きいものと考えられ、その採用にあたっては十分議論されるべきであった。

 

とあります。

 

コメント

韓国などは、まだ確認審判制度が残っており、特許の侵害訴訟の時の技術的範囲の確認などは、確認審判制度が前置され、それは機能しているように思います。

裁判官は技術的には専門家ではないので、技術専門家の意見を聞くことは良いのではないかと思います。

 

小野先生が、鑑定嘱託制度について、採用にあたっては十分議論されるべきであったとするのは、おそらく、当事者系の訴訟では双方の代理人弁護士・弁理士が死力を尽くして、2つの異なる鑑定をした方が、真実発見に貢献するという意味と理解しました。

 

この嘱託鑑定制度と、裁判所の調査員とはまた違うのでしょうか。

 

さて、商標に戻りますが、海外では商標調査時に特許庁のオフィシャルサーチを使うことが多いのですが、これは判定に近いなと思います。

オフィシャルサーチの結論と、実際の審査は、事実上同じになるので、参考にしなさいと、海外の代理人のレターによく記載されています。

 

審査官と同じデータベースを使い、審査官がサーチするので、同じ結論になるとあります。数週間でオフィシャルサーチも出ることが多いので、審査も、滞貨がなければ、案外早くできるんだろうと思います。

 

確認審判制度がよいか、判定制度がよいかは、議論のあるところですが、民間の代理人がしっかりしているなら、確認審判制度も判定制度も不要です。

昭和34年法で、確認審判制度を一つランクを落として判定制度にしたということは、民間の代理人に期待してということも云えるのではないかと思います。

判定制度を確認審判制度に格上げするということは、民間の代理人が頼りないということの裏返しであり、知財大国(知財立国ではなく)という姿とは違います。

 

あまり役所に機能を集中するのは賛成できず、民業圧迫の可能性のある判定制度は、縮小方向を目指すのが、良いのではないかと思います。

それに振り分ける審判官がいるなら、審査の促進を第一に考えないと、いけないということになります。

(登録主義が機能するのは、審査が半年以下となったときですので。)