Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その45)

商標権の侵害

商標権侵害を、単に侵害者が登録商標を無権限で付する行為のみに限定すべきではない。

商標法では、36条(差止請求権)や38条(損害賠償)などの規定において、「商標権の侵害」という文言のみで規定され、「商標を無断で付する行為に対して」のみ救済を与えると限定していない。

「商標の機能を害する行為」を侵害とする考え方が強くなってきている。

 

例えば、

  • 製品から他人の商標を取り去って、自己の商標を付し、他人の商品を自己が製造した商品と見せかけ、他人の商標の信用を無断で利用する行為(逆パッシングオフ)
  • 商標を抹消し、削除する行為(抹消・剥離行為)
  • 出所表示機能や品質保証機能を害する、改造・加工行為
  • 小分け行為(真正商品の詰め替えは商標権侵害:ハイ・ミー事件、しかし、これについては、商標品を小分けするだけで、登録商標と同意類似の標章を使用せず無印又は包装者自身の商標を付したに過ぎないときは商標権侵害とはならないという渋谷説がある)
  • 商標権の希釈化(ヤマハピアノおとり広告事件:自己商品の販促への周知著名な商標の品の広告宣伝機能の利用であるが、商標権の希釈化からも考えられる)
  • 平面商標を音で表したもの(※ この論点は、音商標を認めた現在、修正が必要だと思います。)
  • インターネットモール運営者の責任(Chupa Chups事件:判例は一般論としてはモール運営者への差止請求、損害賠償請求は、肯定できるものの、本件では商標権侵害主体性を否定)

などが解説されています。

 

このあと、37条の侵害とみなす行為の説明となり、真正商品の並行輸入となります。

 

コメント

商標権侵害は、単純に、他人の登録商標を、商品に付することだけをいうのではなく、商標の機能を侵害していることをいうとし、例を挙げて説明されています。

 

商標の抹消・剥離や、自分の商標の貼付が商標権侵害にあるというのは、今では当然とされていますが、現場では、まだこのような行為が完全になくなっているとは言えないのではないかと思います。

 

ここでは書けない話もあり、商標の侵害は、商標法の目的に立ち返り、商標の機能を害していることが商標権侵害ということを社内研修などで、徹底する必要があります。

 

不正競争防止法2条1項1、2号や3号が想定しているケースではないので、商標権侵害で対応する必要があるように思います。

 

ライセンス、税関登録や刑事事件と同様に、商標登録があって良かったと思う瞬間です。

 

以前の会社に、私が入社する前の商標部のトップの特許管理誌の論文が、網野先生の本にも紹介されていましたが、小野先生の本にも紹介されていました。歴史に残る業績なんだなと思います。

 

Chupa Chaps事件ですが、特許ニュースで判例紹介をしたことがあるのですが、それは引用されていませんでした。