Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その49)

民事的救済

本では、このあたりは詳しく解説されています。必要なときには、該当箇所を読みなおそうと思います。

 

気になったところだけピックアップします。

 

差止請求:

辞書などに普通名称のように登載されたからと言って、それだけでは普通名称になったとはいえない。

訂正請求権は、立法が必要。

 

損害賠償請求権:

通常実施権による差止請求は一般に認めらないが、損害賠償については肯定説が有力である。

 

不使用の商標については、商標法38条1項、2項の適用はないが、3項の実施料相当額はあるとされていた。

しかし、最高裁判所は、不使用では原則的に損害賠償の請求を原則的にとることはできないとした(小僧寿し事件)。

小野先生は、この適用は、少なくとも3年間の不使用で商標権の取消敵状に商標権に限定すべきという考え。しかし、これは最高裁大法廷で覆す必要があり、それまでは、実務では損害賠償はとれないだろう。

 

コメント

不使用商標との関係が重要なところです。

不使用ですので、損害が発生しませんので、損失填補や逸失利益の考え方では、損害賠償請求が困難です。

 

実施料相当額ですが、特許は、もともと不実施でも価値があります。研究者が出願人になる場合など、もともとライセンス中心のものがあり、よって、不実施の場合の実施料相当額は意味があります。

しかし、商標な場合、不使用商標の場合まで、実施料相当額をいつでも与える必要は無さそうです。

 

通常の商標ではなく、どの商品・役務でも強い顧客吸引力がある、ディズニーキャラクターのようなものや、シャネルなどのラグジュアリーブランド、ソニーのような超著名商標であれば、不使用の商品まで価値がありという考えがあるかもしれませんが、通常の商標では、そんな力はありません。

素直に考えると、小僧寿し事件の判断で良さそうです。

 

しかし、これでもまだ、不使用商標にも差止請求権が残っています。

ここが明確になるには、立法や判例を待たないといけないのですが、立法は一度チャレンジして、却下されているようですので、判例に期待するしかありません。

 

もし、不使用商標では損害賠償も、差止請求もできないとすると、商標調査の実務は大きく変わります。現在の日本のように商標登録のデータベースだけを見てコメントするようなことはなくなり、アメリカやドイツのように、商標登録のデータベースは見ますが、その上で、使用実態まで見て、不使用なので使えますとか、指定商品は抵触していますが実際上の事業内容とは違うので使用は可能でしょうとか、全く別の判断になっていきます。

 

企業で商標管理をしていた肌感覚では、このような運用が素直ですが、今後のポイントは裁判所がそのような判断をするかです。

小野先生もそうですが、学者の方でも登録主義が良いという方が多く、不使用でも差止は認められるのが良いと思っている人が多く、なかなかひっくり返りません。