フランス政府の要請が理由
2020年9月12日の日経に、LVMHがティファニーの買収を撤回する件についての記事がありました。
LVMH、コロナで痛手 ティファニー買収撤回 世界で店舗閉鎖、利益減少(写真=ロイター) :日本経済新聞
- 米国が仏のデジタル課税に対抗し、仏製品に報復関税を課す
- これに対応するため、仏外相がLVMHに2021年1月まで買収を延期するよう要請
- 仏政府の要請により、(11月がクロージングの)買収を断念せざるを得なかった
- しかし、米国の報復関税とティファニーの買収延期がどう関係するのは不明確
- 昨年11月に決めたティファニー買収は162億ドル(約1兆7200億円)。当初から「高すぎる」との声
- 新型コロナで、LVMHの2020年1~6月期の純利益は前年比84%減
- ティファニーの2020年5月~7月の売上高は24%減。主力の米大陸地区は44%減
- ティファニーの株価は下がり、LVMHは6月、買収計画の見直しに入った
- LVMHは正当な撤回の理由を探し、仏政府に協力を呼びかけたとの噂
- ティファニーは反発し、提訴。LVMHも反訴
コメント
既にM&Aを決めていたものでも、クロージング前なら、見直しが入ることがあり、今回はフランス政府の要請(2021年1月まで買収を待つようにという指示)に従うと、2020年11月のクロージング時にという契約は無理になり、契約は無効になるということなのでしょうか。
日経には、LVMHが仏政府に働きかけたような噂があるいことや、そもそも、アメリカとフランスの関税の争いと、LVMHのティファニー買収の関係性は不明確としています。
米国のデジタル企業の利益に税金をかけたいとフランス政府が考え、それに対抗するため、米政府は、LVMHのフランス製品を米国に輸出するときに、高額の関税をかけるとすると、LVMHの売上や収益は悪化する可能性が高そうです。
しかし、そのことと、既に買収合意の契約をしたティファニーのM&Aとは別の話のように思います。
米国としたら、ティファニーをフランス企業のLVMHが高額で買ってくれること自体は、Welcomeの話だろうと思います。それも、昨年約束した高額の契約ですので、願ったりかなったりです。
LVMHとしては、自身の収益も、ティファニーの収益も悪化しており、今は、以前の金額では買いたくない。できれば、事情変更があったとして、一株当たり135ドルを、安くしたいというのは分かります。
そこで、フランス政府と相談したのか、しなかったのは分かりませんが、フランス政府にレターによって、契約の履行に待ったがかかったということのようです。
このあたりの話になると、ヨーロッパやアメリカの近代史、現代史を見ているような動きです。
以前は、模倣品対策などでも、日本の政府や大使館は、一企業のためにあまり動いてくれず、外国の政府や大使館は動いてくれると、良く聞きましたが、最近は日本の大使館などは動いてくれるのでしょうか。
日産とホンダをくっ付けようとしたとか、政府は政府の判断で動くようですが、ホンダとしてはたまったものではないということで、結局、日産に政府保証をしたという話が出ていました。
数年して日産が復活すると政府保証は無駄にはならないのでしょうが、政府保証という話は危険です。
それよりは、このフランス政府のようなダイナミックな動きが、国際政治や国際経済活動では有用なんだろうとなと思いました。
欧米人は、日本人が考えもしない、驚くようなことを良く主張するので、参考になる事例ではないでしょうか。