Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その52)

手続的商標法/総説/代理人弁理士、不受理処分

新・商標法概説は、3部構成の最後の「手続的商標法」という部分になっています。審査、審判、訴訟を扱う編ですが、例えば、弁護士が商標案件を取扱うときに、特許法の参考書を見なくても、全部の事項が記載してあるという本書の便利な特徴の一つです。

 

まずは、その手続的商標法の総説の部分で、気になったところだけピックアップしました。

 

  • 在外者の商標管理人:在外者は商標管理人を設置する必要があり、特に授けられた権限の他、一切の手続き及び商標法・命令により行政庁がした処分を不服とする訴訟について本人を代理する。しかし、商標権・出願権の譲渡などの実体的権限は有しない
  • 代理権の範囲:商標法条約は、代理人による手続を簡素化するため、出願から商標権消滅までに至る継続的な代理権の委任と、出願及び登録の包括委任状を認めた。そのため、出願から権利消滅までに至る間の各手続をすべて包括的に代理できるようになった
  • 弁理士の業務範囲:対庁手続以外に、商標権等の売買契約・通常実施権の許諾に関する契約その他の契約の締結の代理若しくは媒介、これらに関する相談が追加された
  • 弁理士の業務の特例:審決取消訴訟の一審(知財高裁)二審(最高裁)の(単独)代理人に加えて、特定侵害訴訟について弁護士と共同して訴訟代理人となることができる
  • 法的期間と指定期間:在外者はすべて遠隔地であり、請求又は職権で延長がある(法定期間中に期間延長の請求が必要)。指定期間は請求により職権で、延長可能

 

コメント

上に気になったところを挙げてみました。

企業にいるときは、商標管理人の制度をつかったことが無かったのですが、特許事務所の場合は重要です。

 

包括委任状ですが、海外の仕事をしていると、外国は更に進んでおり、欧州への出願時や異議申立時など、何も要求されません。当事者の意思が合致して、委任が成立していればそれで良いということだと思います。次に商標法条約が改正されてるようなことがあれば、包括委任状も不要となるのではと思ったりします。

そもそも、依頼人の意思に合致しない場合、費用請求ができませんので、通常は委任状で縛るまでもないように思います。

 

ただ、工業所有権の委任は、他の委任とは異なる面があります。例えば、日本でも他の国でも商標出願時には、使用意思を要求しますが、この意思を確認する手段が特にありません。

本来は、出願の願書に使用意思がありますとサインや印鑑が欲しいところです。この替わりを、代理人への委任状へのサインや印鑑が果たしている面があります。

委任状がないと、願書はただの書面になってしまいます。これは工業所有権の特徴であるように思います。

 

弁理士の業務については、契約の代理や相談が業務に入っていることは大きいですね(弁理士法4条3項1号)。

弁護士から、これらの業務は非弁行為だと言われかねないところですが、明確に立法的に解決されているところは大きいように思います。

従来からやってきたことを、注意的に記載しただけなのだと思いますが、大きな条文です。

 

例えば、商標に同意書制度が導入された場合、現在の対特許庁の業務では完結しません。相対的拒絶理由=類似は、当事者で話あって、同意書や共存契約書という形式でまとめることになります。

その業務は多くは弁理士が担当する必要が出てきます。そのときの根拠として重要だなと思いました。