不正使用による商標登録取消審判
不正使用による商標登録の取消審判は、商標権者の不正使用(51条)と、使用権者の不正使用(53条)の2種類がある。
- 商標権者の不正使用取消審判は、類似範囲のみ。一方、使用権者の不正使用取消審判は、同一及び類似範囲まで。
- 何人も請求できる公衆審判規定である。
- 使用権者の不正使用は使用許諾制度を認めた結果、商標権者に使用権者の監督義務を負わせたものである(逐条解説)。制裁の対象は、使用権ではなく、商標権としている。
- 商標権者の不正使用取消審判は、「故意」が条件となる。ただし、この点は立法論的には反対がある(石井照久博士)。
- 故意の要件は、最高裁の判例には他人の商標を認識し、商品混同の認識まで必要というものがあるが、通説は他人の商標の認識でよいとし、審判においては、周知著名のみによって混同認識や故意認定をする例すら多い。
- 混同については、別の種類の商品との混同、他人の商品との混同(その場合、他人の商品が現存しなくても良く、広義の混同を含む)、混同は混同の危険(混同のおそれ)でよい。
- 制裁規定であり、効果は権利の全部取消となるので、指定商品又は指定役務の全部について商標登録の取消請求をすべきである。
コメント
実務では、不使用取消審判や無効審判は良く使ういますが、この51条や53条はあまり使わないのかと思っていました。しかし、色々と判例もあるようです。
まずは、51条ですが、
本書に、何回か出てきたので、「アフタヌーン事件」を見てみましたが、「被服など」について、「アフタヌーンティー」及び「AFTERNOONTEA」を二段併記した商標権でしたが、有名なサザビーの「Afternoon Tea」に書体を似せて使用したことでサザビーリーグ側が勝訴した判例です。
権利は、今はサザビーリーグのものになっているので、どこかで和解、譲渡が成立しているようです。
商標はズバリではないですが、不使用取消審判では同一性の範囲と見られるのではないかと思います。しかし、需要者に誤認混同が生じるという意味では、誤認混同は生じるといえます。
案外、不正使用の防止のために、51条も重要な条文なんだなと思いました。
故意が条件になっているのですが、緩やかに解されているというのは本書にもあります。不正使用により需要者の利益が害される場合の制裁ということですが、上記のような例もあるんだなと思いました。
さて、この項目ですが、古い判例の紹介のあたりで、末川博、石井照久、江川英文など、いつもの知財の大御所とは違う、民法、商標、国際司法の大先生の名前が出てきてました。
この条文、この時代からあったようですが、法律学者の興味をそそる、法的な論点が詰まっているようです。