Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

新・商標法概説(その64)

代理人等の不登録登録に対する取消請求、審判手続き一般

 

代理人等の不当登録に対する取消請求)

外国商標権者の商標を、日本の輸入代理業者などが、外国商標権者の承諾を得ないで、商標登録を取得したときの取消規定である(53条の2)。

取引の円滑、需要者の利益保護、国際的な誠実な取引慣行に反するということで、パリ条約のリスボン改正条約で6条の7が採り入れられたことに対応する。

 

正当な理由があれば、取消を免れるため、正当な理由が一つの論点になっている。

また、「代理人又は代表者」とは広く、代理人、特約店、委託販売業者など広く商標権者の商品を輸入し販売するものを指すと解するか、狭く、代理権を持つものや代表者と解するかという考え方の対立がある。

 

判例では、「商標権者との間に継続的な取引により慣行が形成され、日本国内における商標権者の商品の販売体系に組み込まれるような関係にあった者も「代理人又は代表者」に該当する」とする(Chromax事件)。

しかし、商標権者との間に格別の信頼関係が必要とする判決もある(東京高判昭和58年12月22日や、アグロナチュラ事件)。

 

(審判一般ー審決の効力)

平成23年改正で、一事不再理の原則が、当事者だけになっている。

 

(審判一般ー訴訟手続の中止)

裁判所は、無効審決の結果を待たずに、請求棄却の結論を出すことも可能になっている(39条、特104条3)。

 

コメント

審決の効力、訴訟手続の中止のあたり、現実の争いでは重要なところなんだろうと思います。しかし、私の業務は、外国商標の調査や出願や中間といった特許事務所的な業務が中心で、同意書取得(共存契約)や簡単な許諾被許諾程度はありますが、日本の係争系はノータッチですので、あまり日頃気にすることはありません。

 

パリ条約の6条の7になりますが、代理人等の不当登録は、外国商標でも重要です。

外国で商標は使用している(実際に販売しているのは、ここでいう代理人)のに、日本の事業の方針か、予算などの理由で、商標出願がされないとき、現地の輸入代理店などが商標出願をしたいという気持ちは良く分かります。

 

なんとか、パリ条約6条の7を使わなくても問題ないようにできないものかもと思います。

本来は、日本企業はマドプロなどを使って、どんどんと外国出願を増やすべきなんだろうと思いますが、商標外国出願はコストがかかりすぎるのか、あまり外国出願の数は多くないなと思います。

マドプロ出願をすることは国内商標出願に比べると、大変ではありますが、もし、コストが問題なら、調査はSAEGIS程度にして、マドプロを自社で出願して、中間になったときだけ日本の弁理士経由で現地代理人を使うという方法もあります。

異議や無効で争うことより、出願することを好むのが日本企業の商標戦略の特徴ですが、外国出願については、なぜだか今一歩だなと思います。

 

先日、マドプロの啓発活動で、WIPOの方が事務所に来た時に、本当はマドプロは電子出願に対応しているし、外国では電子で出せる国が多いが、日本では紙のみという話がありました。日本のマドプロの出願数が、システムを開発するには、足りないようです。

 

現在は、特許庁の事前チェックがありますが、電子出願になるとやり方が現在とは違ってしまい、商品関係の拒絶が大量発生しそうです。

中国やインドネシアのようにリストから選択するのが分かりやすいのですが、反発がありそうです。

対策は、WIPOに日本の特許庁の国際出願室のメンバーを数名送って、調整してもらうという方法がありそうですが、やはり電子出願はマドプロ拡大の鍵になるように思いました。