Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

玄米茶の話

精米が多く、玄米は少ない

2020年10月10日の毎日新聞(電子版)の記事で、玄米茶は玄米は、精米を煎ったものが多く、玄米を煎ったものは少ないという話がありました。

玄米茶には、玄米が入っていない? ルーツをたどって見えてきた その理由 - 毎日新聞

  • 読者から、玄米茶には、玄米はほとんど使われず、精米が使われているという投稿を元に取材
  • 辞書の定義は、蒸した玄米を煎って緑茶に混ぜた、こうばしい香りのする茶(デジタル大辞泉
  • 伊藤園は、ラベルの商品名の下に「国産玄米100%」と記載。一方、原材料名欄には「米(日本)、緑茶(日本)、抹茶(日本)/ビタミンC」。同社は、煎り米には玄米からヌカを一部取り除いたお米を使っている
  • 業界団体によると、玄米茶は昭和のはじめごろ、余って硬くなった餅をお茶に入れて飲むようになったのが始まり。当初から玄米ではなく精米を使っていた可能性
  • 煎り米の専門業者によると、9割は精米。ただし、一部ヌカを残すことが多い
  • 玄米茶には精米が使われており、業界では当然の事実
  • 精米を使いながら玄米茶と表記して売ることは、消費者を誤解させることにつながり、表示のルール上、問題ないか?
  • 消費者庁食品表示対策室は、玄米茶は、茶とコメをブレンドした加工食品と理解。茶葉とコメが使われていれば、玄米茶として問題ない。また、精米を使っていた場合、原材料名欄に「玄米」と書いても、表示のルール上は問題がないとのこと
  • 業界団体幹部は、煎ったコメがきつね色のため、その見かけから玄米茶と呼ばれるようになったとのこと。米茶と呼んだほうがより正確かもしれないが、玄米茶という言い方がすでに広まっており、そのままずっと使われている
  • 業界団体によると、煎り米に精米を使う場合は、原材料名には玄米と表記せず、米とすることを推奨
  • 煎り玄米が入った商品を買いたい場合は、取材で、生活クラブ・スピリッツが販売している

コメント

このネタで、ここまで取材してくれるのか。さすが新聞社の取材力は違うというのが感想です。

 

取材の順番も、おそらく、記事の通りなんだろうと思いますし、ネット調査から電話や対面の調査になり、この記事になると思うのですが、

取材先は、伊藤園、業界団体、煎り米専門業者、消費者庁と、4つもあります。

この記事を書こうとすると、大変な労力がかかるなと思いました。

 

米茶と呼んだほうがより正確かもしれないが、玄米茶という言い方がすでに広まっており、そのままずっと使われている

商標法的にみると、商品の普通名称、普通名称化とも関係する、この箇所が、きの記事の一番面白い点です。

 

消費者庁の説明は、分かったような分からないような説明ですが、社会的に承認され、問題のないものであるので、そのまま放置しておくのが一番よいという考えではないのかなと思いました。

このため、米茶とするまでもなく、玄米茶のままで良いという結論になります。

しかし、シャンパンとスパークリングワインの区別をしてきたように、玄米を使った業者が声を出して、世論を味方にすれば、米茶と玄米茶の区別は、できるのかもしれません。

 

健康志向で、玄米が人気なので、玄米のお茶は価値があるにも思います(玄米には白米よりも残留農薬がある可能性があるので、浸水して除去することが必要なようですが)。

玄米と残留農薬、取り除き方 - ページ 2 / 2 - 玄米生活 ~玄米の正しい食べ方。万能発酵液/発芽玄米発酵水(リジュベラック)で玄米パワーを。

 

もう一つ、この玄米ではなく精米を使ったのもがほとんどということからすると、辞書の定義は修正すべきではないかと思いました。「蒸した玄米を煎って」→「蒸した米を煎って」です。

ここは、商標の普通名称化の防止の対策としても、辞書への普通名称としての記載の修正請求権に近いものです。