商標権侵害の可能性
2020年10月9日の朝日新聞夕刊に、高級洋酒の製造番号が削って消されている商品があり、正規品でないおそれがあるという記事がありました。
- 日本洋酒輸入協会によると、製造番号がけされえた洋酒は、10年ほど前から流通
- 相場より4割ほど安く量販店で売られているなど
- 高級酒では、流通量全体の数十パーセントに
- 国税庁は、望ましくないという通達を出している
- 正規品に比べ、品質が劣るおそれ。本物でない可能性
- 東大の玉井教授は、製造番号を削る行為はメーカーの商標権を侵害する可能性があると指摘
- メーカーの品質保証のためのコントロールを受けたくないとして番号を削っているのでは
- 日本洋酒輸入協会は、国税庁に法制化を求めているが、罰則を伴うため国税庁は慎重
コメント
商標を削除することが、商標権侵害になるということは良く聞きますが、製造番号の削除が商標権侵害になるというのは、どういう理屈だろうと思いました。
日本洋酒輸入協会のWebサイトに、この問題が出ています。
協会の意見|日本洋酒輸入協会 JAPAN WINES AND SPIRITS IMPORTERS' ASSOCIATION
ロット番号削除問題検討チームとあり、国税庁に対して法的規制を求める要望書と、玉井教授の意見書があります。
玉井先生の意見書をみると、海外の判例の紹介などがあり、製造番号の削除行為が、商標権侵害と認定されているケースが紹介されています。モンブランの万年筆などの事例の紹介がありました。
https://youshu-yunyu.org/2018.06.26ikensyo.pdf
昔ながらの高級洋酒のイメージは、ウイスキーやブランディなどですが、この種の蒸留酒なら、直射日光を避けることは別として、あまり厳格な温度管理は不要なのかもしれませんが、ワインとなると温度管理などが重要です。
メーカーが、この種の製造番号で分かることといえば、製造日、製造工場、第一次の流通先といったところでしょうか。商品が点々流通するなら、二次以降の流通先は一次流通への聞き取り調査でもしないと分かりません。
流通過程で、メーカーに知られたくない流通業者が製造番号を削除して、安く卸しているのでしょうが、輸入業者の経営が厳しくなるので、輸入業者は法的規制を主張しているのだと思います。
本来は、海外の高級酒メーカーが主張すべきなのですが、LVMHのような企業なら訴訟をするだけの体力もありますが、ワインの中小メーカーとなると、日本で訴訟をするのは難しいかもしれません。
そうなると、ワインの中小メーカーの意向を受けた日本の正規の輸入業者が声を上げるのも理解できるように思います。
輸入業者が、日本で広報宣伝などをして、当該高級洋酒を有名にしているようなケースがあれば、製造番号を削除したり、削除されたものを販売している業者は、その努力にただ乗りしているともいえます。
ただ、国税庁が動かないのは、なぜなんだろうと思います。規制をすることが、面倒だということでしょうか。あるいは、すでに日本で相当ボリュームが出ているので、いまさら止められないということでしょうか。
今回は、お酒なので国税庁が出てきますが、製造番号の削除行為は幅広い対象の問題ですので、全てのメーカーの問題でもあります。
より一般論として、商標権侵害のことを考えておく必要もありそうです。