プリンス スマートイン
2020年10月8日の日経電子版に、プリンスホテルが宿泊単価が1万円前後の新業態のホテルを開業したという記事がありました。
プリンスホテル、宿泊単価1万円前後の新業態に参入 :日本経済新聞
- ホテル名は「プリンス スマートイン」。宿泊特化型のホテル。宿泊単価は1万円前後。20~30代の需要取込み
- スマートフォンを活用。非接触でチェックイン。アプリがルームキーに。荷物も店頭の機械に。客室にはスマートスピーカー
- これまでは「プリンスホテル」などで展開。レストランや宴会場などを持つフルサービス型。接客やおもてなしを重視。宿泊特化型ホテルへの参入ははじめて
- 約10年間で100店舗体制に。新幹線の駅、地方都市、空港近くなどに
- 同社は、若年層の取り込みが課題。スマートインで若者との接点を持ち、会員組織化。将来は上位ブランドのホテルに
- 国内の約8割は国内客による国内観光。しかし、若者の旅行離れは深刻。さらに、団塊の世代が75歳になると旅行人口が大幅減
コメント
低価格ブランドは難しい問題です。
考え方としては「プリンス スマートイン」に若い宿泊客に泊まってもらい、会員になってもらい、将来はより高級な「ザ・プリンス」「グランドプリンスホテル」「プリンスホテル」を利用してもらうこととあります。
一方、「プリンス スマートイン」が成功して、本当に10年で100施設ができた場合、相当目立つものになります。新幹線の駅、地方都市、空港近くという立地なら、否が応でも目に留まります。プリンス=手軽で、リーズナブルなホテルというイメージがつく可能性があります。
マリオット(Marriott)などは、エンドースブランド戦略を採用して、別のホテル名称をメインにして、小さくBY MARRIOTTと書いたブランドにしています。
(下記の「当社のブランド」参照)
https://www.marriott.co.jp/default.mi
今回、「プリンス スマートイン」「PRINCE SMART INN」ということであり、プリンスを表に出しています。エンドースというよりは、プリンスを主体にした、サブブランド戦略のようであり、プリンスホテルのスマートインですという理解がされると思います。
同社のWebサイトを見ると、
とあり、更に、その他の川奈ホテル、万座高原ホテル、などがあるようです。
プリンスホテルについて | 会社情報 | プリンスホテルズ&リゾーツ
プリンスを冠することで、プリンスホテルの一つということが、一目瞭然です。また、プリンスホテルの認知を活用することができるので、スタートアップ時は非常に有利です。しかし、プリンスホテルにブランドのイメージに、例えば安い、サービスレベルが低い、などのイメージがつくおそれもあります。
私見では、マリオットのように、「スマートイン/BY PRINCE HOTEL」ぐらいが、ちょうど良かったのではないかと思います。
一方、日経にも紹介されていた、星野リゾートは、新業態は、「BEB」「OMO」としているようです。
星野リゾートの方が、ブランド論からすると素直です。
低価格ブランドでブランドができるのか?という問いは良くある問いです。ユニクロ、GU、しまむら、ニトリ、サイゼリヤなどが、低価格でも成功しているので、悩ましいところです。
しかし、低価格のブランドという概念は、ブランド論の本質(高く売る、多く売る、永く売るために、ブランドを育てる)からは、離れてしまいます。
「プリンス スマートイン」が成功したときに、プリンスホテルのブランド価値にどういう影響がでるか、今から継続的にリサーチしておき、必要な場合は、名称やブランドロゴを再検討することも必要ではないかと思いました。