Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

キヤノンとエコリカ

インク容器のICチップの仕様変更

2020年10月25日の朝日新聞に、エコリカキヤノンを相手取り、3000万円の損害賠償請求訴訟を起こすという話が出ています。

  • インクカートリッジは年約2億個が流通
  • エコリカは、キヤノンなどのカートリッジを回収し、インクを再注入し、純正品より2~3割安く販売
  • キヤノンは、2017年9月に発売したインクカートリッジでICチップの仕様を変更して、インクを再注入しても「インクなし」と表示される
  • そのため、リサイクル品の製造・販売ができなくなったとの主張
  • キヤノンの純正品のシェアが84%から、95%にアップ
  • 独禁法の禁ずる、「競争者に対する取引妨害」にあたると主張
  • 消費者にとっても、競争品がなくなって自由な価格設定が可能になり、選択の余地が減る

コメント

独禁法に基づく損害賠償なんですね。それも差止請求はなく、損害賠償だけです。

3000万円ということは、売り上げが減った金額に比べれば、相当に低い請求金額ではないのではないかと思います。お金の問題というのではなく、キヤノンのICチップの変更が独禁法からみて、正しいのかどうかを正面から問うということでしょうか。

 

これから提訴するという段階のようです。その段階で訴訟の予告をマスコミに発表するというのは、キヤノンに交渉に載って欲しいという意思表示のような気もします。

 

キヤノンとすると、インクは儲けの源なので、再充填業者を締め出したいと正面から言ってしまうと別の問題になるので、論点はインクの充填をしたリサイクル品では、品質の保証はできないという主張になっていると思います。

 

インクの再注入をエコリカが行う場合と、個人が詰め替えインクを購入して、インクの再充填を行う場合がありますが、個人が行っても、当然、プリンター上で「インク無し」と表示されるんでしょうね。しかし、個人の行為まで制限していることは、本当に良いのかなという気はします。

 

ちなみに、エコリカのWebサイトを見ると、キヤノンのこの問題については、「インク残量検知機能無効操作」ということも可能なようです(機種によって無効化ができないようです)。

エコリカ - サポート -

 

この表にあるのはキヤノンの製品だけです。ということは、エプソンなどは、エコリカのインクが使えるようです。

消費者が、エコリカや自分でインク充填できる製品が良いと思うと、キヤノンから離れてエプソンに行くかもしれませんが、その危険性を考えても、エコリカのような業者を締め出したかったということでしょうか。

 

キヤノンを選択する消費者は、高い純正のカートリッジでも満足する人だけになるという構図です。それで棲み分けができるなら、それはそれでも良いのかもしれません。

 

再充填業者のエコリカなどからも特許使用料をとったり、技術支援料をとったりして、料金を回収するシステムを考えるということも可能なように思いますが、それもできないということは、インクの再充填は簡単な作業なんでしょうね。個人でもできるぐらいの作業ですから。。。

 

※提訴があったようです。

カートリッジ会社がキヤノン提訴 「仕様変更で販売妨害」 大阪地裁(時事通信) - Yahoo!ニュース