意匠法改正の解説を読みました
パテントの2020年10月号に掲載されていた、弁理士の安立卓司さんの「弁理士が知っておくべき、新しい画像デザインの保護」という論考を読みました。
- アイコンやウェブサイトの画像等についても、意匠権が発生しうる
- 従来は、物品への記録が保護要件になっていたが、米国、欧州、中国、韓国では物品に記録されていない画像に関する意匠についても保護されている
- 従来は、物品への表示が要件となっていたため、壁や人体などに投影する画像は保護されなかったが、欧州や米国では保護されている
- ウェブサイトの画像や操作用アイコンの画像単体で権利化できる
- しかし、操作画像、表示画像の何れにも該当しない画像(例えば、コンテンツの画像)は、意匠法では保護されない
- 画像意匠の場合、意匠に係る物品の欄には、「画像の用途」を記載する
- 画像の類否判断としては、用途及び機能に共通性があれば類似する
- 類似は、画像どうしだけではなく、物品等の部分に画像を含むものにも発生する
- アイコンは、これまでの商標に加え、意匠のクリアランスが必要
- 意匠弁理士は少なく、コンフリクトが起こるので、商標や特許の弁理士の参画が必要
というような内容です。
コメント
昔の理解では、アイコンは著作権法の保護対象という理解でしたが、App StoreやPlay Storeでは、商標として機能しているので、商標ということは理解していました。
さらに意匠も調査して、出願しないといけないとなると、依頼人側のコストに跳ね返ります。
通常の、商品名称の商標のように、全てのアイコンが商標権の取得をしているかというとそうでもなく、有名なものや権利意識の高い権利者のものに限定されているのではないでしょうか。
建築物や内装の意匠登録を見ていると、意匠と商標には今更ながら厳然たる違いがあります。新規性です。
商標の感覚では、内装などはトレードドレスの立体商標として考えますので、基本的に、新しい商標は基本は識別性なしで拒絶され、既に使用しており有名になったものだけが、使用による顕著性のようなもので登録になるような処理をしています。
一方、意匠の場合は、先日登録になった建築物や内装の意匠を見ても、少し既視感はあるのですが、実際のリアルにあるものではないはずです。もし、リアルに存在するものを図面にしたものなら、新規性欠如で拒絶されます。
しかし、アイコンの場合は、使用していないアイコンでも、商標でも意匠でも、登録条件を満たします。
アイコンについて、どちらの保護を選択するかは、依頼者・出願人の自由です。重複保護の対象です。
一方、操作画像や表示画像は、意匠法マターです。こちらが、今回の主戦場になるのではないでしょうか。
例示されている、NAVITIMEの画面など、どのネット系のサービス提供会社でもやっています。
物品性の縛りもないので、類否判断の対象となる先行意匠の業種は限らないと思います。同じようなものが多数出願されたとき、少しの違いがあれば、すべて登録するとするのか?先行意匠に広い権利を与えて拒絶するのか?という問題がありますが、あまり広い権利を与えるのは考え物であるように思います。
一方、狭い権利が付与されるとして、意匠登録を取得したからといって、商標と異なり、意匠の場合は絶対に当該意匠が無制限で実施できるとも限りません(利用意匠、部分意匠などがあります)。
やってみないと分からないことも多いですが、画像については、色々とありそうです。