Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

統計資料から

日本と海外との「商標のやり取り」

2020年3月に発行された「特許庁ステータスレポート2020」と2020年7月に発行された「特許行政年次報告書2020年版(本編)」に、日本と各国の商標出願のやり取りの表(グラフ)があったので、見ています。

 

●「特許庁ステータスレポート2020」

2019年における出願人国籍・地域別商標登録出願件数(上位10カ国)(29頁)

https://www.jpo.go.jp/resources/report/statusreport/2020/document/index/0101.pdf

 

2019年に日本国に商標出願された件数は、190,773件ですが、その内訳を見ています。日本という国を市場として見ている国はどこかと言えるのではないでしょうか。

  1. 日本から:148,913件
  2. 中国から:12,508件
  3. 米国から:8,800件
  4. 韓国から:2,973件
  5. 欧州(ドイツ、フランス、英国、スイス、イタリアの合計)から:8758件

このあと、台湾、オーストラリア、その他と続きます。

ドイツ、フランス、英国、スイス、イタリアを足すと、8,758件ですので、米国と並びます。

 

中国、米国、欧州が、日本を市場と見ている企業がある国であり、その合計出願数は、30,066となります。

日本企業が日本を市場と見るのは当然ですが、その5分1程の数を、わざわざ中国、米国、欧州の企業は、日本に商標出願をしています。

 

●特許行政年次報告書2020年版

主要国・機関間の商標登録出願区分数の関係(区分数、2018年)(33頁)

https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2020/document/index/honpen0101.pdf

一方、こちらは、5極(日本、米国、韓国、中国、欧州)間の出願のやり取りを見たものです。

 

年度が、2018年と一年ずれていますし、区分数でみたものであり、日本への出願が512,156件と2.6倍ほどになっています。

 

それはさておき、問題は、欧州と米国、欧州と中国、中国と米国、間の商標出願の

やりとりは、

欧州→米国:72,990件

米国→欧州:65,581件

 

欧州→中国:84,928件

中国→欧州:64,862件

 

中国→米国:57,125件

米国→中国:51,031件

 

と各々、太いパイプです。

これだけ市場が相互依存している証拠だろうと思います。それに比べると、日本は日本で閉じこもっているように見えます。

もっと日本市場を開放的にして、外国からの商品・サービスの流入を図ると同時に、反対に、従来以上に積極的に、日本から海外に、商品・サービスを輸出振興をすべきとなります。

 

また、日本から、米国や欧州への出願が、米国や欧州から日本への出願の半分以下という点も気になります。特許事務所でいう、外内が伸びていません。

 

日本企業も、積極的に海外に商標出願しているつもりなのだと思いますが、世界の相互出願の伸びはそれ以上です。

 

ちなみに、手元に、2016年の同じ表があるのですが、その35頁によると、

特許行政年次報告書2018年度版

欧州→米国:68,349件

米国→欧州:55,591件

 

欧州→中国:63,470件

中国→欧州:39,191件

 

中国→米国:34,910件

米国→中国:34,677件

となっていますので、3年で相当の件数が伸びていることが分かります。

 

日本は、この3年間、中国とのやり取りだけは、相当増えていますが、欧米とのやりとりは微増程度です。

日本企業の元気の無さが出ているようです。