Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

日本標準産業分類表と類似商品・役務審査基準

改定頻度と大きな違い

類似商品・役務審査基準が参考にした(特に、商品の部分)といわれる、日本標準産業分類のWebサイトを眺めています。

専門家ではないので、以下は、素人の感想です。

 

初版は、昭和29年(1949年)です。

最新版は、平成25年(2013年)改定(第13回改定)です。初版からカウントすると14個の基準があることになります。

また、最近は、7年間、改定がされていないことになります。

総務省|統計基準・統計分類|日本標準産業分類

 

初版と、現行版を比べると、大分類の数が大きく違います。

初版はAからMまでで、現行版はAからTまであります。新しく生まれた産業を追加して、古い産業は名称を変えたり、まとめたりしているようです。

総務省|統計基準・統計分類|日本標準産業分類(昭和24年10月設定)

https://www.soumu.go.jp/main_content/000286962.pdf

追加や削除もされています。

 

●「類似」する産業をまとめる、用途や生産、流通を考慮する、というような点は、商標の類似商品・役務審査基準と共通しますが、日本標準産業分類は、もともとが統計のためのものです。

そのため、過去を振り返る、過去との連続性は、商標ほど、必須のものではないようです。

 

●商標の類似・商品役務審査基準は、商標出願の審査のためのものですが、日本の商標法では商標権侵害は、商標と商品(役務)の類似範囲に及ぶとしているため、商品(役務)の類似範囲を確定するときの参考にも使われます。

 

商品(役務)の類似範囲は、時代とともに変化しますが、過去、商標登録を取得したときの商品(役務)の類似範囲が、広くなったり狭くなったりするのは、あまり好まれず、類似商品審査基準ができたときの、商品(役務)の類似範囲を、基本的に踏襲しているが現状です。

 

既存の権利者に配慮しているということが言えますが、類似商品・役務審査基準のもとになった日本標準産業分類自体は、変わっていっているので、本当は、類似範囲について齟齬が発生しているようにも思えます。

 

今一度、現在の日本標準産業分類に基づいて、類似商品・役務審査基準を見直すならば、現状の類似群コード(短冊)は、だいぶ違ってくるのではないかと思いました。

 

また、商標権侵害の場面では、古い類似商品・役務審査基準を適用するのではなく、最新の類似商品・役務審査基準を参考にしているのではないでしょうか。出所混同のおそれは、今、この時を基準に考えるしかないためです。

今を見るなら、過去の類似群コードは、過去の出願時点、審査終了時点の類似群コードでしかなく、今の類似群コードとは、実体内容が違ってもいいはずです。

版によって、本来は違っているはずの類似群コードを、過去から現在まで同じ類似群コードで処理するのは、時代の進むにつれ、齟齬が拡大するだけではないかと考えられます。

 

一方、商標調査や商標出願の審査を考えると、類似群コードの意味内容を固定化しておかないと、毎回、毎回、類似商品・役務審査基準の改定毎に類似群コードの書き換えが必要になるという話になります。

 

欧州など海外では、大概念や上位概念ではなく、個別商品中心で、侵害時など、指定商品・役務の同一(アイデンティティ)の部分は、権利だけで侵害を認めて、それ以外に分けて、類似部分は混同でみるようです。

 

商標権の取得は、侵害排除やライセンスのためであり、審査や商標調査のためにある訳ではありません。

海外ではだいたいそうですが、個別商品(役務)にコードを付与し、類似範囲は侵害判断時、異議申立時に、個別に判断するというのが、筋が良さそうに思います。

 

●産業分類の世界も、国際標準産業分類(ISIC)というものがあるようで、それと日本の産業分類の整合性が議論になるようです。

総務省|統計基準・統計分類|日本標準産業分類

対照表がエクセルで添付してありました。

上位概念や中概念があるですが、あくまで細目を導き出すためのものと理解しました。

 

上位概念、中概念で括ろうとするのが、グローバルな標準と合致していないように思います。