知財保護をアピール、5倍賠償、存続期間の延長、部分意匠など
2020年11月28日の日経に、中国共産党の2021年~25年の第14次5か年計画の草案で、「科学技術を自力で高める」とし、そのために、知財保護を強化するという記事がありました。
中国、知財保護アピール 賠償額上げ 特許法改正へ :日本経済新聞 (nikkei.com)
内容は、
- 改正特許法は2021年6月施行
- 特許法は、損害賠償は権利者の損害額か侵害者の利益から確定すると規定
- 今回、重大な権利侵害には損害額の最大5倍を科せるとした
- 懲罰的損害賠償は、米国、韓国、台湾にあり、最大3倍
- 中国も3倍の案だったが、5倍となった
- 著作権法も悪質な侵害者は引き上げる
- しかし、中国では侵害者が証拠提出を拒んだ場合、被害者側の主張に基づき裁判所が賠償額を決め、この場合、賠償額は500万元(約8,000万円、従来は100万元だった)という上限つきとなる
- 原則20年の存続期間なども延長
- 意匠では日本がなどが求めていた部分意匠を導入
とります。
コメント
損害賠償に5倍の懲罰的賠償を認めるという点と部分意匠の導入に注目しました。
どのような場合に、5倍の懲罰的賠償が認められるのか分かりませんが、5倍というのは相当な金額になるので、ある程度の侵害抑制効果はあると思います。ただし、500万元のキャップがはめられています。
国際的なアピールと、中国企業が困らないようにという、バランスをとっている感じです。
なお、記事を読んだ感想ですが、侵害者が証拠の提出を拒んだ場合に、裁判所が損額額を決めるというのは良いとして、そもそも、権利者が損害額を主張しても、この損害額は、なかなか認められないのではないかと思いました。
記事には、もう一つ、中国の知財紛争の件数が載っているのですが、2017年ぐらいからぐんぐん伸びており、2019年は48万件の訴訟(前年比44%)とあります。
新興国等知財情報データバンクに、2017年の話が載っています。
中国における知財関連訴訟件数 « 新興国等知財情報データバンク 公式サイト (inpit.go.jp)
2016年の数字ですが、
- 刑事(8,000件程度)や行政(審決取消訴訟)(7,000件程度)よりも、民事訴訟が圧倒的に多く(16万件ぐらい)です
- また、民事事件では、著作権事件が一番多く、次に商標、その次に特許(意匠を含む)となっています(グラフからは、民事の6~7割が著作権事件です。商標が2割、特許・意匠が1割です)
著作権侵害が大量にありますが、どんな内容なのでしょうか?
ブランドのロゴなども著作権登録をすることもあるのですが、実際はどんな内容が多いのか、気になります。
ディズニーのキャラクターのようなものが多いのでしょうか?Webサイト検索では、日本の事例では、「しまじろう」が出てきました。
クレヨンしんちゃんやしまじろうの話は聞いたことがあります。
ただ、現実には、著作権が、商標登録の代用とか、意匠登録の代用とか、違った使われ方がしているような気がします。ここは、チャンスがあれば確認したいと思いました。
ちなみに日本の裁判は、2017年で、審決取消が236件で、民事は地裁で692件、知財高裁で105件、全国高裁で131件と言う数字です。
全部足しても1,000件ちょっとであり、10倍しても10,000件しかありません。