Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「地獄のカレー」と「血の池地獄カレー」

札幌地裁は非侵害と判決

2020年11月25日の日経に、「血の池地獄カレー」は、「地獄のカレー」の商標権を侵害しないという札幌地裁の判決が紹介されていました。

「地獄のカレー」の商標権侵害せず: 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • 原告は、札幌市の北都で、「地獄のカレー」の商標権を有する
  • 被告は、大分市のヘルカンパニー他で、「血の池地獄カレー」を販売
  • 原告は、差止と約370万円の損害賠償請求を求めた
  • 札幌地裁は、非常に辛いカレーという観念が共通してだけで商標が類似しているとは言えないと訴えを退けた

とあります。

コメント

裁判所のサイトでは、判決は出ていませんでした。大分合同新聞社の2020年12月2日のWeb版の記事によると、原告は札幌高裁に控訴したようです。

 

●地獄のカレー

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858円

血の池地獄カレー

血の池地獄カレー - 株式会社 Hell-Company (shop-pro.jp)

440円

 

画像を見る限り、両者のデザインは全く違います。価格も2倍の開きがあります。

 

原告は、今回、不正競争防止法違反を主張していませんが、デザインの違いが大きいのでしょうか。今回の争いは、あくまで商標権侵害です。

 

大分合同新聞によると、北都の「地獄のカレー」は2010年の出願し、商標登録されています。これに対して、被告は、「血の池地獄カレー」を2019年2月に発売し、2019年11月に商標出願したようです(※ J-PLATPATで見ると、まだ出願中です)。そして、提訴は2020年2月で、判決が2020年11月です。

大分合同新聞は、大分県の新聞ですので、被告よりの記事です。

 

被告の「血の池地獄カレー」は、まだ審査中ですが、原告の「地獄のカレー」とは非類似として登録になる可能性が高いように思います。

 

商標の類似は、称呼、観念、外観の類似を、総合的に判断します。音数や文字数、使用している文字が、だいぶ違いますので、今回、称呼と外観は非類似と思います。

次に、問題の観念ですが、新聞は、判決は「非常に辛いカレー」という観念が共通するとしていますが、ここは、正確に判決を見たいところです。「地獄のカレー」と「血の池地獄」(※別府の「血の池地獄」は有名な温泉です。)の観念が本当に類似すると言えるのか、ちょっと疑問です。単に非常に辛いカレーというイメージが共通するが、観念は非類似と言っているかもしれません。

「地獄」と「血の池地獄」は、観念的には違うように思います。ここは、要確認です。

 

観念は別として、外観、観念、称呼を総合観察すると、商標的には非類似と判断する人がほとんどではないでしょうか。

 

北都は、地元の札幌での裁判ですので楽ですが、大分のヘルカンパニーの弁護士は札幌まで行くのは大変そうです。

北都としても、今回、新聞やWeb記事に取り上げられているので、双方にとって、ある程度の宣伝にはなったと思います。

しかし、北都は控訴していますので、あくまで類似であり、侵害すると言いたいのでしょうね。