少し前の記事ですが
最近、ソニーやパナソニックが持株会社化するという話があり、持株会社と知財権の帰属について、検索をしてみました。
デロイト・トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社の小林 誠さん(当時)の記事がありましたので、読んでみました。
jp-ipa-holding-company-20160422.pdf
持株会社(ホールディング)に、
- 権利の名義を一元化する、しない
- 管理を一元化する、しない
で四象限に分けて、説明されています。
- パターン1:管理集中、権利集中
- パターン2:管理集中、権利分散
- パターン3:管理分散、権利分散
- パターン4:管理分散、権利集中
ホールディングとは別に、知財管理専門子会社を付ける方法も提示されています。
コメント
著者の小林さんは、既にデロイト・トーマツを2019年に離れられているようです。
この論考が書かれたは、2016年です。
当時、デロイト・トーマツとしては、知財管理手法であるとか、知財子会社の設立などを、税務を交えてコンサルすることを目指したのだろうと思います。
しかし、最近は、アップルなどの、アイルランド子会社を使った節税に対して厳しい目が向けられています。
現時点、あまり税務を全面に押し出すべきではないのかもしれません。
さて、
アメリカ企業は、基本的にパターン1です。税務メリットのために、知財管理子会社をタックスヘイブンに作ることはあっても、実際はその子会社は本社の別動隊でしかありません。
一方、日本企業は、このパターン1が下手、苦手です。
本来は、ここを目指すべきなのですが。。。
日本企業は、パターン3のことが多いと思います。
もともと事業のポートフォリオの出し入れをする経営企画の発想で、M&Aもするし、売却もするというのであれば、このパターン3はあり得ます。例えば、LVMHなどは、このパターン3で十分です。
しかし、従来の日本企業の知財部門は、そのような積極的な意味で、パターン3になっているわけではありません。
できるだけ自分達で管理する範囲を減らしたい本社知財(経理のコスト圧縮の圧力がある)と、できるだ本社から独立したい子会社の思いから、放置しておくと自然にパターン3になり、言うことを聞かない、グループ戦略がない、バラバラな状態になります。
そのためでしょうか、最近は、パターン2が時々あるなと思います。パターン2は、知財名義は各会社にし、M&Aや事業売却もしやすいようにしておくけれども、知財管理は本社知財をかませて、あるいは、知財専門会社に集中して、グループとしての統一感を保ったり、管理のレベルの低下を防ぐというものです。
この論考では、パターン4は、あり得ないとなっていますが、三菱グループのスリーダイヤモンド商標やMITSUBISHI商標の管理は、パターン1とも言えますが、パターン4の側面もあります。
海外の商標権の名義は、基本は三菱商事に集めているのは有名ですが、グループ会社各社が分担して管理している側面もあります。
三菱グループの場合は、緩やかな仮想的本社があるような感じでしょうか。
まあ、いろいろな管理の手法がありうるということだろうと思います。
知財権と一括りにするのも危険です。グループ運営は特許よりも商標が重要ですので、商標を中心に考えるべきことは言うまでもありません。