Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

八丁味噌の話

老舗が名乗れなくなる?

2020年12月16日の朝日新聞のニュースQ3のコーナーで、「八丁味噌」というGI(地理的表示)に関する争いの話を読みました。

  • 八丁味噌は、愛知県岡崎市八帖(はっちょう)町で江戸時代から製造
  • 伝統製法の2社(組合あり)は、八帖町に限定、木桶に限定などの条件
  • 2社の組合のGI申請について、農水省は地理的範囲を広げるように要請
  • これに対して、2社は反発して取り下げ
  • その後、別の組合が、愛知県全域で、ステンレタンクを認めるなどの条件で、農水省がGI登録
  • 2社は、2026年から8「八丁味噌」と名乗れなくなる
  • 2社は、行政不服審査法による不服申立て
  • 専門家の第三者委員会での審査中だが、地域に根差した伝統的な製法を保護する、南欧のGI先進国とはちがい、農水省は輸出優先の傾向

というような内容です。

 

コメント

八丁味噌がもめているという話は聞いていました。

八帖町に限るというのは、地理的に狭い感じがありますが、それよりも、2社しかないというのは、生産者の組合としては構成員が少ない感じはします。

この問題は、1920年代から続く、100年越しの問題だそうです。

 

新聞には、このGIの認定とは別に、地域団体商標の話もあったとあります。2社が「八丁味噌」を、別の組合が「愛知八丁味噌」を出願したそうですが、双方拒絶になっているようです。

 

この記事を見て思ったのは、2社の方が、先にGIの申請をし、農水省が登録に難色を示したときに、申請を取り下げている点です。

これは致命的だなと思いました。

 

今から考えると、却下処分をもらい、行政不服審査法の不服申立をして、更に裁判まで戦うべきでした。

江戸時代から名乗ってきたのに、名乗れなくなるばずがないという気持ちも分かりますが、相手は別の組合というよりも、政府の役所です。法律の後ろ盾があるので、強権を発動することが可能です。

裁判所に場所を変えて、和解の道をさぐるべきでした。

 

もう一つは、世論です。この問題については、世論を味方につけないと、勝ち目がなさそうです。八帖町だけ、2社だけという条件では、あまりに範囲が狭く、既存の別の組合の業者が困ります。反対にこちらの方が、100年使ったいた八丁味噌の名称を使えなくなるというのも課題です。

 

農水省の専門家委員会では、2社を「伝統八丁味噌」、別の組合のものを「八丁味噌」とするという和解案を出しているそうですが、今となっては、致し方ないかなという感じがしました。

2社だけが表記を変えるのですから、2社の事業にできるだけ有利なような、売上アップにつながるような良い名称が出来ればと思いました。

八丁味噌は、八帖(はっちょう)町に由来しているようですので、漢字の違いも面白さを活用して、「八帖町八丁味噌」などもあります。

 

繰り返しになりますが、争いごとにはタイミングがあるので、別の組合のGの登録前に、裁判に持っていくべきだったと思いました。

2社としてはもっと言いたいことがあるとは思いますが、記事の情報からはそう思いました。