Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

特許業務法人から弁理士法人へ

また、一人法人を容認へ

2020年12月28日の特許庁のWebサイトで、産業構造審議会 知的財産分科会 弁理士制度小委員会での議題が掲載されていました。

第17回弁理士制度小委員会議事次第・配布資料一覧 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

 

これによると、現在、

  1. 特許業務法人の社員数(代表者数)を「一人」でも良いとする(現在は二人以上必要)
  2. 特許業務法人の名称を「弁理士法人」とする

ということが議論されています。

 

資料を読んで理解したのは、

1.の論点については、特許事務所を経営する弁理士の高齢化で業務継続をする必要があるが、法人化しておくと業務の承継がスムーズに行くにも拘わらず、二人の法人社員というハードルで法人化できない特許事務所が多いので、一人事務所も法人化できるように改正する。

2.の論点については、特許業務法人という名称では、意匠や商標が含まれておらず、また、不正競争防止や著作権が含まれておらず、実際の業務範囲と一致しない。特に、最近は特許の件数が減り、商標の件数が増えている。

 

他の士業との比較では、公認会計士法人を除き、一人法人を認めているところが多く、また、「士業名+法人」というネーミングが多いということが根拠になっています。

 

<一人法人を認める士業>

弁護士 社労士 司法書士 土地家屋調査士 行政書士

<「士業名+法人」のネーミングの士業>

弁護士法人 税理士法人 司法書士法人 土地家屋調査士法人 社会保険労務士法人 行政書士法人

 

コメント

平成12年(2000年)の弁理士法の改正で、特許業務法人が生まれましたが、当時は公認会計士監査法人ぐらいしかなく、公認会計士を参考にしたのだと思います。

 

特許事務所は、当時から、法律事務所に比べると大きなところが多かったのですが、法人化で更に大規模化して、更に業務範囲を拡大し、(将来的には訴訟代理権までということで、)色気を出したのだと思います。

 

もう一つの理由が、二人法人なら業務の承継が円滑という理由でした。

今回の話では、二人法人にしなくても、法人化することで個人資産と事務所資産の分離ができ、代表者の弁理士の死亡等で業務が継続しにくくなっても、他の事務所への業務の移転が円滑に進むという説明がありました。

 

どちらも成立しうる説明ですが、前者の説明は当該事務所内で業務を継承することを前提にし、後者の説明は他の事務所に業務を継承という視点が変わっています。

これだけM&Aが活発になっているので、考え方としては、今回の説明の方が納得性があります。

 

さて、気になったのは、「弁理士法人」という名称です。当時は、「特許事務所」という名称はそれなりに知られていましたが、「弁理士」の知名度は現在よりもだいぶ低かったように思います。弁理士の数が、1万名に増え、このことが、「弁理士」という名称の認知をあげたように思います。

今回、「弁理士法人」とすることで、自然に「弁理士」という名称の露出が増えますので、更に認知度がアップします。

その意味では、これは良い改革だなと思いました。

 

企業の担当者の視点では、源泉徴収しなくて良くなるので、どんどん法人化して欲しいという感覚でした。

 

資料を見ていると、前株的に「弁理士法人ABC特許事務所」とする案が記載されていますが、「ABC弁理士法人」とするだけで十分です。「弁理士法人ABC特許事務所」は、重複記載があり、また、長いネーミングは避けるべきです。

また、前株よりは後株の方が、ブランド部分(「ABC」の部分)が目立ちますので、ブランディング上も有利です。

 

本当は、「特許庁」「特許事務所」という名称よりも、「知的財産庁」「知財事務所」が良いと思いますし、この際、弁理士会は、「特許事務所」をできるだけ使わないように、すなわち、「弁理士法人」だけを使うように指導していはどうでしょうか。

 

その趣旨からすると、「弁理士」のことを英語で「Patent Attorney」(特許弁護士)と訳していますが、「IP(Intelectual Property) Attorney」(知的財産弁護士)か「IP(Industrial Property)Attorney」(産業財産弁護士)に変更すべき時期ではないでしょうか。

弁理士になって30年以上経ちますが、一度も、特許出願はしたことがありません。やったことがあるのは、商標出願、意匠出願、著作権相談、ライセンス契約といったもので、実用新案の出願はやったことがありません(研修ではやりました)。

折角、変更するなら、ここまでやってはどうかと思います。

 

文化庁の京都移転がありますが、著作権課だけが東京に残ったようです。特許庁著作権課を吸収をして、諸外国のように「知財庁」(Intelectual Property Office)にしないと、知財ミックスの時代についていけないように思いますが、どうでしょうか。

政治家は考えてくれているのかもしれません。

 

なお、「弁理士法人」にするのは良いのですが、「特許業務法人」の表記を「弁理士法人」の表記に変更する必要があり、登記やステーショナリーやWebサイトなど大幅な変更が必要になります。このコストは各事務所持ちなんでしょうね。