Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

「サッポロ 開拓使麦酒仕立て」の発売中止

発売前に発売中止

2021年1月8日のファミリーマートサッポロビールニュースリリースに、誤表記が原因で、新製品が発売中止になった話があります。

「サッポロ 開拓使麦酒仕立て」発売中止について|ファミリーマート|ニュースリリース (family.co.jp)

「サッポロ 開拓使麦酒仕立て」発売中止について | ニュースリリース | サッポロビール (sapporobeer.jp)

 

両社のリリースの内容は同じです。リリースによると、この商品はサッポロビールファミリーマートの共同開発商品で、ファミリーマートの限定販売商品のようです。

 商品名:サッポロ 開拓使麦酒仕立て

  • 新発売のリリース日:2021年1月5日
  • 発売予定日:2021年1月12日
  • 発売中止のリリース日:2021年1月8日

 

誤表記ですが、缶の左側に記載する「LAGER」という文字にスペルミスがあったようです(「LAGAR」と記載してしまった)。

 

コメント

今回、

多くの担当者が、この商品なり、写真なりを見ています。しかし、誰もスペルミスに気がつかなったということになります。

 

「Lager」は、ビール用語ですので、ビールメーカーとしては問題かなと思いますが、スペルミスは、ありうるミスです。

正しい「Lager」をローマ字読みにすると「ラジャー」とも読めます。一方の間違いの「Lagar」はローマ字読みすると「ラガー」になります。

英語ネイティブの外国人から来るemailでも、案外スペルミスはあります。それについてはある程度の寛容の精神が必要なように思います。

 

発売日前ですが、すでに流通経路にはのっていたと思いますので、回収されるのだろうと思います。消費者からの回収は難しいので、販売前というのは不幸中の幸いという気がします。

  

会社によって違いがあるかもしれませんが、メーカーの品質管理部門が製品のチェックをしている思います。品質管理部門は、狭義の製品品質の問題だけではなく、表記ミスなどものことも対象にしていることが多いのではないでしょうか。

一般に、品質管理部門が表記ミスを気にするのは、表記ミスがあるような商品は、何か別の問題を生じる可能性があるためではないかと思っています。ハインリッヒの法則のような考えです。

 

そのため、それぐらいなら大目に見ても良いものであっても、事前であれば、品質管理部門は、出荷停止命令を出す権限が与えられています。

もし、既に発売しているものなら、健康被害等はありえないため、消費者から回収するまでの必要性は無く、ミススペルを変更してランニングでチェンジすることもあったと思いますが、発売前というタイミングだったので、双方の合意のもと、発売中止になったのだろうと思います。特に、今回は共同開発商品ですので、ファミリーマート側の意向が大きかった可能性もあります。

 

ファミリーマートサッポロビールの間で、品質問題があった場合にどちらが責任を取ることになっていたか、そもそもミススペルは品質問題となるか、回収の実費負担はどちらの企業が行うのかといった、契約上やビジネス上の問題もありそうです。

ファミリーマートの方がお客さんなので、力関係では上ですが、サッポロビールとしても云うべきことは言いたいところです。缶のデザインを担当したのが、どちらのデザイナーかで責任が決められそうです。

 

ちなみに、食品ロスをなくす立場から、回収するまでもないという意見もあるようです。

誤りを積極的に公表して今後は修正しますなどと発表すると、反対にこの商品が人気商品になったかもしれません。

危機管理広報の動きとしては、この方法もありますが、自社ならできても、お客さん(ファミリーマート)があると、お客さんが怒っている場合は、この方法はとれません。 

色々、考えさせられる案件です。

 

追伸:一転して、発売になるようです。2月2日発売とありました。

「サッポロ 開拓使麦酒仕立て」発売についてのお知らせ | ニュースリリース | サッポロビール (sapporobeer.jp)

 

消費者からの温かい声がありとあります。判断が早いですね。