Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

韓国の知財(商標)法制改正

相当、進んでいる

Kim&Changからの電子メールで韓国の知財法がだいぶ変わってきたというものがあったので、JETROのニュースで調べてみました。

知的財産ニュース | 知的財産に関する情報 - 韓国 - アジア - 国・地域別に見る - ジェトロ (jetro.go.jp)

 

●まず、知財法全体ですが、懲罰的賠償などが入るようです。

故意的に他人のアイデアを奪取した者は、損害として認められた金額の最大3倍まで賠償しなければならない(2021年4月)。

商標法・デザイン保護法・不正競争防止法における損害賠償額の算定方法を改善(※)し、権利者の生産能力を超えた販売量に対しても損害賠償を受けることができるようになる(2021年6月)。

※(権利者および侵害を受けた者の生産可能な数量×単位当たりの利益額)+(超過分×合理的実施料率)

2021年に新しく変わる知的財産制度 | 知的財産ニュース - 知的財産に関する情報 - 韓国 - アジア - 国・地域別に見る - ジェトロ (jetro.go.jp)

 

●次に、新しいタイプの商標について、審査基準が改正させるようです。

韓国特許庁は、トレードドレス(※)を企業の商標で出願して登録を受ける事例が増えており、立体・音・色彩商標のような非典型商標に対する審査の正確性を向上し、出願人の便宜を図るために商標審査基準を改正(2021年1月1日)すると発表した。

建物の内・外観のように製品販売やサービスを提供する営業所の全体的な空間が広く使われて特定の人の商標として認識される場合があり、それを登録商標で保護するための詳細基準を確立した。

 位置商標の範囲を既存の大法院判例を通じて認められた「商品の特定位置に使用され、識別力を取得した形状・図形」から「特定位置に使用され、識別力を取得した色彩」まで拡大し、商品の特定位置に使用された完成品の出所表示機能を獲得していれば、色彩も位置商標として保護されるよう制度を補完した。

非典型商標(立体・音・色彩など)の商標審査基準を改正 | 知的財産ニュース - 知的財産に関する情報 - 韓国 - アジア - 国・地域別に見る - ジェトロ (jetro.go.jp)

 

●そして、ソフトウェアの商標は、「用途」を明確に記載する必要が出てきました。

韓国特許庁は、2021年1月から出願されるソフトウェア関連の商標は、用途を明確に記載しなければ、商標登録ができなくなるよう審査基準を改正したと発表した。

ソフトウェアが、さまざまな商品やサービス産業の分野で活発に使われる取引環境、関連業界の意見、米国など外国の商標審査実務を反映し、ソフトウェアに関連する商標審査基準を改正した。

2021年から出願されるソフトウェア関連の商標は、「ゲーム用ソフトウェア」、「カーナビゲーション用ソフトウェア」など、用途を明確に記載した商品のみ商標登録できるように審査基準を改正した。

ソフトウェアと連携したサービスが活性化し、商品としてのソフトウェアに対する「商標」とサービス業種の「サービス標」が類似するかどうかも両標章の「用途」を中心に、具体的・個別的に審査し、需要者の商品やサービスの出所に関する混乱が発生しないように審査基準を改正した。

「今回の審査基準改正は、デジタルトランスフォーメーション時代において、ソフトウェア産業界の実際の取引に適用できる合理的な商品の基準を確立することに寄与するとともに、市場に新たに参入しようとする競合会社がソフトウェアに関連する商標権を取得できるようになるきっかけになる」

ソフトウェア関連の商標出願する時に「用途」を記載しましょう | 知的財産ニュース - 知的財産に関する情報 - 韓国 - アジア - 国・地域別に見る - ジェトロ (jetro.go.jp)

 

コメント

最近、商標出願の審査で商標(標章、マーク)の類似の審査が緩くなってきているという話があります。

20年ほど前のように厳しく運用すると、拒絶の山になるので、マークの類似を狭くすることで、なんとか使用できるようにしているという話です。

ほぼ、審判まで考えると、同一以外は非類似となるので、最近の類似はおかしいという声を聞きます。

 

これに対して、同じように非類似とする方法として、マークに着目するだけではなく、商品・役務の類似の範囲を狭くすべきという考えがあります。これによって、登録を取得できる商標が出てくるという考え方です。(それによって、狭くなり過ぎた商標の類似範囲を少しもとに戻そうという意見もあります。)

例えば、「化学品」「薬剤」「電気通信機械器具」「電子応用機械器具」は、広すぎるので、もっと狭く、例えば、化学品でも、中国のように、20個ぐらいの類似群に細分化するという話です。

 

最近は、総合電機や総合化学という百貨店型の経営よりは、ある特定の範囲でTOPか、No2でないと生き残れない時代ですので、過去の類似群は広すぎるように思います。

また、中国、韓国、台湾などの類似群コードを持っている国で、商品・役務の類似の幅はハーモして行くべきではないかと思います。

 

さて、今回の韓国の法改正ですが、ソフトウェアの類似群を、ソフトウェアで一つにまとめるのではなく、ソフトウェアの用途でまとめるというもので、非常に重要です。

ソフトウェアなら全部類似になるのでなく、用途の商品やサービスとの類似関係が生じるというもので、アメリカに近い話になります。

JETROの説明だけではなく、韓国の類似商品役務審査基準を確認しないとなんともいえないのですが、これは重要な改正であるように思います。

 

韓国が、スマートフォンで商標出願ができるとか、どんどん先に行きはじめています。相当日本の特許庁は出遅れました。

利益団体や裁判官や法律学者の意見を聞くのではなく、国民の声なき声を聞き、運用しているように思います。

日本の特許庁にも衝撃が走っているのではないでしょうか。