Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

デジタルプラットフォーマーの削除拒否

罰則見送り

2021年1月21日の朝日新聞に、アマゾンや楽天といったデジタルプラットフォーマーが、違法品を出品したときに削除要請に応じない場合、運営事業者への罰則導入を見送ることとしたという記事がありました。

 

大手に限らず、広範な事業者が対象になることから、強制力のない要請に止めたとあります。

 

  • 消費者庁は)商品の安全性などについて著しい虚偽や誤認表示があり、出品者の連絡先も偽られていた場合、サイト運営業者に削除を要請できる
  • 要請に応じ、削除したことで、出品業者に損害が生じたとして、運営業者は免責される
  • しかし、要請に応じないときは、罰金などの刑事罰を科すことを検討していたが、法案に織り込まれない
  • 消費者トラブル解決のための取組みの開示義務はあるが、罰則はなく、努力義務
  • また、特定商取引法を改正し、出品業者がサイト運営業者に、氏名や住所を偽ったときの、刑事罰も見送り

となっています。

 

同じ話は、日経にもありますが、こちらには朝日新聞のような指摘はありません。

悪質商品販売停止を要請 ネット取引規制、消費者庁: 日本経済新聞 (nikkei.com)

その替わり、CtoCに対する法適用やSNS(交流サイト)での取引、悪質広告や表示に関する規則導入については今後の検討課題としたとあります。

 

コメント

消費者庁のサイトに、検討会の資料があります。

第12回デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会(2021年1月25日) | 消費者庁 (caa.go.jp)

 

元ネタは、この報告案だろうと思います。

デジタル・プラットフォーム企業が介在する消費者取引における環境整備等に関する検討会 報告書案 (caa.go.jp)

 

これは朝日新聞が言っている部分を削除したあとのものなので、全体には前進しているような感じもします。特に、削除要請に応じた場合のプラットフォーマーの免責は、一歩踏み出しているなという気はします。

 

しかし、消費者保護を徹底するなら、今回削除した部分が重要なようにも感じます。

 

朝日新聞が書いている、あらゆる規模のサイト運営業者が規制の対象になるので、罰則導入を見送ったというのは、中小企業の保護のように見え一見分かったように思いますが、よく考えると、分からないなという気がします。

大企業なら罰則を適用するが、中小企業なら罰則を適用できないので、やっぱり止めようでは意味が不明です。

 

そもそも、消費者庁は、罰則を適用するつもりはなく、大手プラットフォーマーに最大限の対応を引き出すために、罰則というアドバルーンを上げて、目標が達成できたので、取り下げたという感じがしました。

日本のネットは模倣品が跋扈していているので、消費者庁は、徹底的にやって欲しいと思います。

韓国などでは模倣品対策を特許庁がやっていて、特許庁に捜査権まであったりします。それに比べると手ぬるいので、消費者庁は希望の星なのですが。