Re就活(原告、学情)の勝訴
「Re就活」の商標登録を保有している原告(学情)が、「リシュ活」の商標登録を保有している被告(一般社団法人履修履歷活用コンソーシアム)を、商標権侵害で訴えていた事件につき、大阪地裁の一審判決が出ています。
一審判決は、原告の「Re就活」の学情の勝訴です。
詳しい内容が、下記の被告サイトに出ています。
「リシュ活」の商標権侵害訴訟に関するお知らせ | 履修履歴活用コンソーシアム (risyu-katsu.jp)
この事件、ややこしいのは、被告が「リシュ活」の商標権を有していることです。
原告から、被告の「リシュ活」の商標登録について、異議申立がありましたが、特許庁は異議の請求を棄却し、「リシュ活」の登録は維持されています(登録第6179363号、第35類及び41類)。
通常の理解であれば、商標登録を取得すると、専用権(網野誠先生の本の用語)ないし使用権(小野昌延先生の用語)が発生し、法的に当該標章を指定商品・役務に使用することが権利として保証されます(商標法25条)。
特許と違い、商標では利用関係はないので、商標権の権利行使が他人の商標権の侵害になることはないというのが、通常の理解です。
商標登録がある「リシュ活」を商標権侵害というのは、通常の理解では無理があり、被告の上記のWebサイトではその点を指摘しています。
■上記の被告サイトでは、一審の判決文をアップしています。
hanketsu20120112.pdf (risyu-katsu.jp)
判決の書きっぷりでは、被告は、折角の登録商標の存在を、商標の非類似の主張だけで使っており、商標法25条に基づく、専用権/使用権の主張をしていないようです。
「リシュ活」の出願商標は標準文字であるのに対して、実際の使用商標は標準文字でははありませんが、これは、あまり影響ないと思います。これが判断に影響をしているのであれば、標準文字制度の意味がなくなります。
旧不正競争防止法第6条の工業所有権の適用除外がなくなっているので、商標権があるのに、不正競争防止法上は不正競争行為となってしまうという事案はあり得ると思いますが、今回は、不正競争防止法の主張はなく、単なる商標権侵害の訴訟です。
裁判所は、商標法25条を、どう考えるのでしょうか。被告の登録商標に、無効理由があると考えているということでしょうか。
まだ、「リシュ活」は異議段階ですが、次に学情が無効審判を請求して、登録維持の審決が出て、その審決取消訴訟に行って、もし最終的に権利が維持されたとすると、「リシュ活」は、ある種の不可争性を帯びたことになります。今回の民事訴訟とバッティングします。
裁判所は、「リシュ活」の無効について、自信があるということでしょうか。
本件では、商標権侵害訴訟ですが、商標権侵害「Re就活」と「リシュ活」の類否が争点となっており、「出所混同のおそれ」が議論されていますが、アンケート調査もなく、実際に出所混同があったという話も、出ていません。
双方、実際に使用している商標同士ですから、実際の出所混同をベースに考える方が、良いのではないかと思いますが、そのあたりの突っ込みが双方ありません。何か隔靴掻痒の感じがする論点整理、主張立証、判断です。
特許庁の異議申立が、類否のことに終始しているのは仕方ないとしても、侵害訴訟で類否の判断に終始しているというのは、ここが日本の裁判実務の限界なのでしょうか。
侵害訴訟に及んで、実際の出所混同を判断せず、机上の空論ともいえる類否判断に終始しているのは、原告、被告、裁判所とも、突っ込み不足であるように思います。
「Re就活」は、有名なサービスのようですが、実際の出所混同はなかったということなのでしょうか?それであれば、そもそも非侵害と導くのが素直です。
実際に問題ないなら、双方の登録を認め、双方使用できるとするのが、素直です。