普通名称化と防止措置(その1)
続いて、中山 真理子弁理士の「普通名称化と防止措置」を読んでいます。普通名称化とは何か、普通名称化を防止するための方策、各企業の努力という前半と、法的な対応、特に、海外法制、取消制度についての後半になっています。
今日は、前半部分を読んでみます。
まず、普通名称化とは、商標がその使われ方等によって徐々にその機能を失い、需要者・取引者間において、ある商品・役務そのものを表す一般的な名称として認識するにいたった場合とあります。
商標が、著名で、商品・役務自体が目新しいときに、権利行使や辞書等への記載への抗議を放置すると普通名称化が発生すると言われています。
例としては、菓子おこしについての「雷おこし」、クレオソートを主剤とする丸薬についての「正露丸」、レタスについての「サニーレタス」、無線呼び出し用携帯受信機についての「ポケベル」、ブドウについての「巨峰」、節分用巻き寿司についての「招福巻」、うどんめんやうどん料理についての「うどんすき」等があります。
「ホームシアター」「デジカメ」の例も説明があります。(※ 当時、電機業界でな話題でした)
防止策としては、商標登録であることの表示(Ⓡなど)。書体を変える、太字にする、「」をつける。第三者の使用に警告する、出版社に警告する。などが記載さています。
そのあと、INTAの普通名称化の防止が紹介されており、
次に「味の素」の「商標の表記に関する規程」が14か国語で展開されていることや、サイトの紹介があり、「ワンカップ」「XEROX」の紹介があります。
コメント
企業の商標実務としては、非常に重要なところです。
普通名称化防止の鉄則は、商標を考えたときに、普通名称もセットで考えるということですが、その記載がありません。ここはポイントです。
さて、INTAの説明のところに着目しました。
2012年と2015年にガイドラインを出しているようです。
2012年版を見ると、商標は、
- 名詞ではなく、形容詞として使う。動詞や所有格としては使わない。複数形にしない
- 一貫して使用する
- Ⓡ、TM、SMでステータスを表示する
- 区別する。大文字、太字、イタリックなど
などとなっています。
1.の例は、
「a XEROX copier」は良いが、「XEROX these copies」は(動詞になっている)
「a KLEENEX tissue」は良いが、「a five-KLEENEX movie」はNG(名詞になっている?)
などがあります。ちょっと、日本人には分かり難いですね。
2.Trademarkは、名詞は駄目で、形容詞として使えと言いながら、Tradenameは、固有名詞であり、形容詞ではないと言っています。その結果、例として、「“Reebox's newest line of atheletic shoes is for children"」がOKとなるとあります。(この場合は企業を指している。)
3.商標は、すべて大文字か、Ⓡをつけるか、太字にするか、イタリックにするかともあります。
このあたりは、相当に英語特有の表現であり、アルファベット圏とその他の地域でだいぶ違うような気がしました。
日本には日本の表記があるなと思いました。
また、INTA(法律家)の使用例は、ロゴのことをあまり考えていません。ロゴと文字の商標では表記の方法が変わります。法律家の限界です。
INTAでは、「a XEROX copier」は望ましいとありますが、文章中にXEROXロゴが入ることは望ましくありません。また、文章でなくても、カタログの左肩などのブランド表示部分は、シンボルとしてのXEROXロゴを置くべきであり、そのXEROXロゴに他の要素である「copier」が来るのはNGです。
普通名称化を防止するための、表記のルールですが、日本語、アルファベット圏、その他の国で、だいぶ違いがあるだろうなと思いました。
味の素の14ヶ国語のルール、見たいなと思いました。