証明商標制度について
続いて、足立勝米国ニューヨーク州弁護士の「証明商標制度について」を読みました。
世界では、証明商標制度を採用する国が多く、主要15か国で採用していないのは、ドイツとメキシコだけだったのが、2019年にドイツが採用したようです。
証明商標の定義が2つ紹介さていますが、その一つに、「ある商品又は役務について、その原産地、品質、その他の特徴が、証明機関等の特定の者により認証・証明されたものであることを表示するマーク」とあります。
TPPの11条で、商標には団体標章と証明標章を含み、保護する義務があるが、商標登録制度で保護をしても良いそうです。
判例では、知財高裁の「JIL」事件があり、工業会の加盟各社が使用しているが、工業会自体は使用していなかったケースについて、審判で不使用取消された事案が、知財高裁でライセンシーによる使用があるとして、登録が維持されることになったケースが紹介されています(知財高判平成23に円3月17日、平成22年(行ケ)10359号)。
また、GRAM事件の紹介があります(知財高判平成25年9月25日、平成25年(行ケ)10032号)。
青本、田村教授、渋谷教授、工藤先生、は、証明商標は商標であり、商標法に包含されているという立場ですが、
茶園教授は、日本法は証明商標を保護しておらず、証明する者が自ら使用する場合に、商標の使用にあたるとして保護している。
宮脇教授は、認証機関は自ら使用していないため、3条1項柱書違反となるとします。また、証明商標では出所を表示していることにならず、品質を証明しているだけであり、出所表示機能を果たしていない商標であり、26条1項2号により商標権の効力が及ばないとします。
米国法と欧州指令・規則、ドイツ法で違いがあり、米国法では、商標とサービスマークと証明標章(Certification mark)は、別ものと観念するのに対して、欧州法では商標の一種とします。
米国では、ライセンス契約と管理が必要で(※米国の商標ライセンスの考え方に近い)、保有者は使用してはならず(※これを条件とすると登録取得が厳しい)、基準に合致する場合は拒否ができないとります(※独禁法的な考え方です)。
欧州では、証明標章(※欧州では「標章」というようです)は、出願時に使用規則の提出が必要で、使用規則には使用者への罰則が必要であり、所有者は使用していけないようです。
足立弁護士は、証明商標は、出所表示機能や品質保証機能が通常のものとは異なったものであり、日本の商標法で保護されている証明商標は、欧米とは意味が違っているとします。
後は通常使用権などのライセンスの議論が展開されています。
結論としては、海外の証明標章が、国内に入るときに受け皿がないため、欧米流の商標商標を採用することに積極的なトーンです。
コメント
茶園教授や宮脇教授は、証明商標に向けた法改正を求めているようです。
電機業界では規格マークの重要性ということがずっと言われており、昔からドルビー、VHS、DVD、Blu-rayという規格マークは、下手な商品商標よりも重要であり、ハウスマークの次に重要なものは、規格マークではないかと思ったりするぐらいです。
規格マークは、ドルビーやVHS(JVC)は、自らも使ていまので、その範囲では商標の使用であり、それ以外の部分は商標権の効力が及ばない範囲となるというのが、条文の素直な読み方なんだろうと思います。
しかし、通常は、青本説で、通常の商標と同じで何ら問題ないとして、処理している感じです。
ある企業からもらった宿題で、「技術ブランディング」を検討したことがあります。技術ブランディングを調べると、テフロンやゴアテックス、ドルビーとなるのですがが、日本では、「JIL事件」や、特に東レの「GRAM事件」となります。
このあたり、商標の運用の本質に絡むものであり、
不使用取消審判を活性化させ、商標採択の余地を広げて、登録主義の弊害をなんとか少なくしようというのが、特許庁の審査・審判の流れだったのですが、
現在は技術的なものを示すマークでも、技術と分からないように上手く使用すれば、不使用取消を免れるという解釈が一般的です。
このあたりも、証明商標が導入されると、考え方の整理が進むかもしれません。
規格マークなど、デファクトスタンダードなのですが、デジュールスタンダードのマークは、商標出願はしませんので、証明商標が入っていくとデジュールスタンダードのマークを含めて、証明商標制度をメインに使い、サブとして商標制度があるいうことになるのかもしれません。
はじめは、証明商標は面白い論点なのかどうか分からなかったのですが、非常に重要な論点であるように思えてきました。