Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

日本商標法の未来のための方策検討(その14)

独禁法と商標ライセンス

この別冊パテントからの最後は、林いづみ弁護士の「独禁法と商標ライセンス」です。弁理士にとって、独禁法は、普段は触れることが少ない法律です。

 

独禁法21条には、「著作権法特許法、実用新案法、意匠法又は商標法による権利の行使と認めらる行為」は、独禁法の適用除外とありますが、

公取の見解では、形式的には各知的財産権法による「権利の行使」とみられる行為でも、制度趣旨に反すると認めらる場合には、当該行為は、権利の行使と認めらず、独禁法が適用されるとあります。

 

公取は、「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」はその旨を記載しており、同指針は、特許ノウハウのためのものであるため、商標法の場合は、直接的に適用はされないものの、その権利の性格に即して可能な範囲で、独禁法上の指針の考え方が適用されるとあります。

 

知財に関する独禁法上の「正当理由」としては、色々挙げられていますが、商標の場合は、「商標の信用・ブランドイメージ維持目的」」というものがあり、並行輸入への制限行為が正当化される場合あるようです(コンバース事件)。

その他、化粧品会社の対面販売についての事件があります。

 

販売先の制限については、東芝エレベータ事件と、オンラインでの販売制限が記載されています。

 

その他、販売価格の制限、再販売価格維持や、広告宣伝費の一部負担の問題、農協が商標権を取得した場合の商標の使用制限などが、説明されています。

 

筆者の関心は、独禁法と商標ライセンスの関係についての論文がなぜ少ないのかという点にあり、それについては、商標法の解釈論(権利消尽、商標機能論、最高裁の類似判断、公序良俗、権利濫用論など)の中に、「権利の行使」の制限が内在しており、これが理由ではないかとしています。

 

コメント

独禁法の説明の詳細を十分理解しているとは言えないのですが、商標法の解釈論の中に、権利行使を制限する理論が内在しているのは、事実だろうと思います。

確かに商標法では、判例や解釈で権利行使を制限しなければならないことが多いと思います。

そのため、商標法上、権利が行使できないのですから、独占禁止法上の問題になる前に、OUTになっているものがあるというのはそう通りです。

 

林弁護士は、米国IPライセンスガイドラインを引用して、米国でも状況が同じであることが示されています。特許やノウハウはinnovation-related issuesで、商標はproduct-differentiation issuesとあり、特許ノウハウは技術革新についてのものであり競争を前提としており、商標は差別化についてのものでありそもそも競争とはあまり縁がないことが示唆されています。

 

Compact Discの規格やDVDの規格で、色んなものが出てきたことがあり、商標権をもってそれらを調整(コントロール)することが、独禁法違反になる(競争的な技術開発を制限する)などが理由になって、色んなものを認めて、最終的には市場の判断を待つということがありました。

独禁法的な考え方が商標法に大きく影響している事案かなと思いました。

 

後、規格マークの使用強制が、独禁法に違反するという話を聞いたことがあります。こちらは、あまり追及して確認しなかったので、良く分かっていないのですが、規格jマークの使用強制が問題という結論だけを覚えています。

 

日本の独禁法では問題になっていないだけで、海外では問題になっている可能性もあります。

また、チャンスがあれば、調べてみたいと思います。