Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

米国 商標現代化法(Trademark Modernization Act)

2021年12月27日施行

商標協会の実務検討部会のメーリングリストで、米国商標法が改正されることを知りました。下記のUSPTOのWebサイトに情報があります。

Trademark Modernization Act establishes new procedures | USPTO

 

不使用であることを疎明する陳述、証拠、手数料が必要となるようですが、2つの不使用取消が認められるようになります。

■不使用商標の取消

不使用取消請求の手続きができるようです。

指定商品の一部または全部の取消が可能です。

登録日から3年から10年の間(※欧州や日本の不使用取消審判に近い感じです)

 

■不使用商標の再審査

使用されていなかったことを理由に、商品・サービスの取消を要求できる。

こちらは、登録から5年以内という限定があります。(※これは、実際には使用されていないのに登録されてしまった商品・サービスを削除するためのものでしょうか。)

 

これらの取消決定については、TTABに不服申立ができ、更にはCAFCに訴えることもできるとあります。

 

■OA期間の柔軟化
60日~6ヶ月で柔軟化する

 

■情報提供制度

長年の実務を明文化

 

■侵害関係のルールの整備

 

コメント

侵害関係の改正も重要なようで、米国の弁護士さんなどは、こちらに注目しているようですが、弁理士としては冒頭の2つの取消が重要です。

 

これまでの、米国の不使用取消は、非常に独特で、不使用状態が続いているということは、商標権を「放棄」しているものと考えるというものでした。欧州、日本、中国など、世界で一般的な不使用取消審判とは、ちょっと異なる制度でした。

そのため、使用を再開する意思があるようなときは、放棄とはいえないので、不使用でも取りされないとされていました。

oshima_ustrademark.pdf (onm-tm.jp)

100041953.pdf (inpit.go.jp)

 

米国では、登録時、使用宣誓時、更新時に、使用証拠をチェックしますので、そもそも不使用商標は少ないという前提があるのだろうと思います。

しかし、上述のような、使用意思の有無に左右される面があったので、批判があったものと思います。

 

もう一つの、再審査の方ですが、審査のミスの是正のようなものではないかと思います。

今は、登録後の使用宣誓や更新時のチェックが厳しくなり、オーディット(Audit,

監査)もランダムというには多いので、実務上は、本当に使用している商品・サービスだけを登録する運用が一般的になってきていすが、それの運用を登録時において、より確かなものとするための改正だろうと思います。

 

一点、重要なポイントは、この再審査は、INTAのWebサイトにあった下記の文章には、本国登録には適用されないとあります。 

U.S. Trademark Modernization Act Signed into Law - International Trademark Association (inta.org)

しかし、日本の本国登録ベースの権利であっても、登録から3年後には、やはり不使用取消があるということになります(世界中でも一般的なので、これは仕方ないですが)。

 

世界の商標の流れは、欧州でも、中国でも、米国でも、使用を前提にするものに大きく変わってきています。日本の商標法においても、使用していないと権利行使(差止請求、損害賠償請求)できないという構成は必須と思います。なぜか、日本の学者は、実務をやったことがない人ばかりで、なぜか登録主義が好き(これは不思議です)で、この点を言い出さないのですが、非常に不思議です。

使用主義に基づく不正競争防止法と登録主義に基づく商標法が交わらない状態は、国際私法の教科書でいう跛行(ハコウ)的な状態であるように思いますが、これが良いという理由が今一つよく分かりません。