口座振替へ
2021年2月17日の日経に、特許庁に特許料などを納付するときの特許印紙の予納制度が廃止され、1年以内に口座振替になるという記事がありました。
特許料 印紙予納を廃止: 日本経済新聞 (nikkei.com)
- 対面手続きを減らすため
- 予納制度は、印紙台帳を作り、料金を残高から引き落とすもので、普及している
- 使い慣れているため、印紙予納が多かった
- しかし、口座振替やクレジットカード払いも可能
- 郵便局で印紙を購入して、特許庁の窓口に運ぶ必要
- 特許庁の収入は1,200億円で、印紙の売上はその75%
とあります。
コメント
重要な話なのかなと思い、特許庁のWebサイトを確認しましたが、特に何の発表もありませんでした。アドバルーン的に広報発信をしてみたのでしょうか。
Wikipediaによると、特許印紙が生まれたのが、1984年とあります。バブルの前です。そして、2005年には、インターネットバンキング等を利用した電子現金納付が可能となったとあります。
記事にある、予納制度の廃止で、大口の特許印紙需要はなくなりますが、特許印紙自体がなくなるわけではなさそうです。
現在も、マドプロなどは電子出願はできず、紙での提出が必須であり、その時に特許印紙が必要です。
特許印紙が重要なのは、特許印紙の概念が特許特別会計にリンクしたものだからです。特許印紙自体は、収入印紙に戻っても良さそうなものですが、特許印紙は特別会計の核心のようなところもあります。
特許印紙自体を止めるなら、その影響は大きいですが、単に予納制度を止めるだけのようですので、特許印紙で納付するという考え方は今後も存続することになります。
ポイントは2つあるかと思いました。
一つは、特許埋蔵金といわれた特許特別会計もついに底をついたという話の関連です。特に、コロナ禍になり、出願件数が減っているので、特許庁の収支を直撃していると聞きます。日本企業は、外国出願は増やすが、日本への出願を精査して減らすという活動を、この30年やってきましたので、いつかはこうなる運命だったように思います。
現在、料金値上げが議論されているようですが、安易な値上げは企業の出願意欲を削いでしまう可能性があります。
また、制度的には、特別会計をやめて一般会計にもどすかどうかという話になります。
日本も製造立国ではなく、グローバルに見ると、1億の人口を擁する販売地の一つと考えると、市場としての魅力を高め、海外から国内への特許出願を増やすしか、特許出願が増える道はありません。
外内出願の強化が特許庁の生きる道であり、海外から仕事を持ってくる弁理士の活動を強化すべきとなります。
二つめは、マドプロです。海外の各国ではマドプロは電子出願可能ですが、日本特許庁を受理官庁とする出願が年3,000件程度と非常に少なく、そのため、日本国特許庁は電子出願のシステムを作ってくれていません。
PCTは年5万件ほどあるので、17倍ほどの規模があります。これとの対比で考えて、日本企業は、もっとマドプロを使った外国商標を伸ばす余地があります。特許の比較では、10倍程度の余地があるのですが、少なくとも3倍の1万件には伸ばす必要があります。
まず、過去の各国登録は、早急にマドプロに置き換える代替の出願をすべきです。
マドプロの件数が少ないから、電子出願のシステム開発をしないのか、電子出願できないからマドプロの件数が少ないのか、卵と鶏の議論です。
WIPOと違って、特許庁はマドプロが増えても、特に実入りが増えるわけではないのですが、WIPOと一体になり、是非、国内企業向けのマドプロの旗振りをやって欲しいともいます。
そしてマドプロにも電子出願を導入して、マドプロでもクレジットカード支払可能にして欲しいなと思います。
ただ、そうなると、特許印紙が実際上、姿を消すことに繋がるのですが、これが特許特別会計と絡んでいて、マドプロの電子出願阻止要因になるとすると、ややこしいなと思います。
予納制度がのこっていれば、気にならなかった点ですが、特許特別会計のシンボルである特許印紙を守るために、マドプロがいつまでも電子出願できないという状況は避けて欲しいと思いました。
そもそも、特許特別会計と特許印紙は概念上はリンクしないはずであり、実際は、関係ないのと思いますが、気になります。