商品販売停止、売主身元情報の開示請求、官民協議会設置
2021年3月1日の日経に、ECモール規制新法の紹介がありました。
ネット通販、モールに規制の網 安全な取引へ新法: 日本経済新聞 (nikkei.com)
- コロナ禍でネット通販は好調。国民生活センターへの相談件数も増加(2020年4月―9月期、13万6000件)前年同期比50%増
- 従来、モール運営業者のアマゾン、楽天、ヤフーなどの責任は問われなかった
- 販売事業者は、登記商号や住所の表示義務。しかし、「場」を貸しているにすぎないECモールには、販売事業者の虚偽の表示をチェックする義務なし
- 消費者庁は今国会に、BtoC取引について、モール側を規制する法案を提出
- 国からは、模倣品や事故のあった商品の販売停止要請可能
- 消費者に、販売事業者の連絡先開示
- 官民協議会設置
- ただし、CtoC(メルカリ)は規制の対象外
- EUや米国では、モール会社にも責任があるという考えが主流に
という内容です。
コメント
2021年1月に消費者の報告書がでていた件です。
アマゾンなどのECプラットフォーム(ECモール)は、「場」の提供をしているのに過ぎず、消費者の取引相手は、出品者(出店者)であり、偽造品・模倣品の販売や、事故があったときは、消費者が出品者と交渉をすべきで、ECプラットフォームには責任が問われないというのがこれまででしたが、やっと変わるようです。
百貨店で、東山魁夷の版画の偽物を販売していると、百貨店の暖簾(信用)に傷がつくとして、百貨店側は回収や代金返済をします。
ECプラットフォームには、この感覚が希薄なようです。楽天などは、できるところはやってきたようですが、アマゾンはドライな感じです。
偽造品や模倣品の販売をやっていると、ECプラットフォーム自体の信用に傷がつくという発想が乏しいようです。
模倣品等でAmazonというブランドの信用が低下するリスクよりも、リコメンド機能や送料無料などの、簡易でローコストな自由な取引環境を提供することの方がブランド力の強化には有効であり、判断の結果、この意味での消費者保護は、アマゾンの中では一つ下の位置づけにあったのだろうと思います。
おそらく、アマゾンにはアマゾンの理屈があって、アマゾンの利便性、価格破壊、物流改革など、消費者には、この種のメリットを提供しているとなります。
また、アマゾンの立場に立つと、アマゾンはあくまでプラットフォーム、キャリアであって、コンテンツの内容までは責任をとるとなると、出品者チェックが大変になり、コストアップとなり、消費者の利益を害することもあるという主張ができそうです。
このあたりはルール決めの問題ですので、ルールができれば、アマゾンもそれに従うということなんだろうと思います。
プライバシーや、名誉棄損についての、プロバイダー責任制限法の考えもありますので、アマゾンの考え方も理解できないことはないのですが、問題は、商標(ブランド)です。
ECプラットフォーマーのサイトでは、Amazon、楽天といった、モールの商標(ブランド)の信用に消費者は依存しています。
これが崩れると、消費者は混乱しますし、日経の最後に記載がありますが、ECプラットフォームは単なる場所貸しではなく、多くの場合、販売活動によって利益を得ています。
テナントについての百貨店ブランドよりも、消費者はAmazonを信用しています。もし、アマゾンが、出品者に責任を持ってもらいたいなら、サイトのデザインを、変えるべきです。
楽天のように、各店舗のロゴ中心にして、売買契約も各店舗とやっているという画面イメージにすべきです。
アマゾンの顔の見えない出品者は、すこし気持ち悪い感じがします。
今回の程度の規制はやむを得ないというところでしょうか。