不道徳な経済学-転売屋は社会に役立つ
図書館で借りて、早川書房の文庫本「不道徳な経済学ー転売屋は社会に役立つ」、橘玲訳、ウォルター・ブロック著を読んでみました。
著者のウォルター・ブロックは、アメリカの大学教授で、経済学の先生であり、リバタリアン(自由原理主義者)です。この本は、1976年の本で、10ヵ国で翻訳されているベストセラーだそうです。原タイトルは、「DEDENDING THE UNDEFENDABLE」(「守れないないものを守る」)ということです。
この本は、橘玲さんが、何回か翻訳を出しており、これは2020年版です。通常の翻訳や意訳を超えた超訳であり、日本人が分り易いように事例などを日本の事例に変更して説明しています。
冒頭に訳者前書きがあり、ここで、リバタリアンの説明があります。アメリカで、代表的な政治的立場は、功利主義、共同体主義、リベラリズム、リバタリアニズムに分けられるそうです。
- 功利主義は、ベンサムの「最大多数の最大幸福」。
- 共同体主義は、いわゆる保守派。伝統、文化、道徳に価値を置く。
- リベラリズムと、リバタリアンは「自由主義」のことだが、リベラリストは「進歩派」であり、人権を守り、自由で平等な世の中を目指す。
- リバタリアンは、機会の平等は重視するが、結果の平等を否定する「完全自由主義者」で、国家の機能を可能な限り縮小し、市場原理による社会の運営を理想とする。
とあり、言葉は似ていますが、リベラリズムとリバタリアンは、全く別のものとあります。
そして、本書には、さらに、「こらからのリバタリアニズム」という訳者の序章がついています。
リバタリアンは、ダーティハリーのイメージだそうです。それが今は、サイバースペースに活動領域を移し、サイバーリバタリアンというものが生まれ、ネット上で究極の自由を求めて活動しているそうです。
本編ですが、所有権の絶対という点を重視しているようです。ちょっと過激なのですが、次の職業を題材にして、本当は社会の役に立っていることを説明しています。
売春婦、ポン引き、女性差別主義者、麻薬密売人。。。幼い子どもを働かせる資本家。
通常は否定されるものが、本書を読むと、反対に著者の言うとおりだなと思わせもす。奇妙な感覚の本です。
所有権の絶対をスタート地点として、自由主義を貫くと、こう考えることになるというのが、よくわかります。
米国大統領選でのトランプ大統領への熱狂的な支持の理由が分るような気がします。