特許庁のWebサイトで、知財活用事例集「Rights」という冊子を知りました。
https://www.jpo.go.jp/support/example/document/kigyou_jireii2020/all.pdf
まず、弁理士の土生哲也先生の巻頭言があり、今日はこれを読みました。土生先生は金融機関におられたようです。弁理士と金融というのは、これまではあまりない組み合わせですが、金融のバックグランドを持っているというのは、コンサル等をするには強みなりそうです。
さて、内容ですが、知財の役割を、「侵害で他人を排除する」、「ライセンスする」という狭義にとらえるのではなく、6つの役割があるとします。
- 他との違いを見える化する
- 従業員のレベルアップ推進
- 競争優位確保
- 取引先との交渉力アップ
- 顧客にオリジナリティを伝える
- パートナーとの関係をつなぐ
1.権利にするには、他との違いを明確にする必要があり、権利化するだけでも重要な効果がる。よく、権利は活用しないと意味がないといわれるが、それは、権利行使という一面しかみていない。マニュアル作成でも、同様にノウハウを見える化する効果あり。
2.マニュアル活用で、また、表彰や報償の制度で従業員のやる気を引き出す、有用な情報の社内共有。
4.の取引先との交渉力アップが可能になり、中小企業として大企業との力関係にも影響する。
5.の特許や意匠を保有していることを伝えることは、自らが元祖であることの証明になり、オリジナリティを主張できる。
6.のパートナーづくりはライセンスであり、特許庁に登録されていることは、ライセンシーに安心感がある。
知財の重要性は、模倣品対策だけではない。
- 機能的価値が重視される時代から、情緒的価値が重視される時代となり、5.の顧客にオリジナリティを伝える力が重要となり、
- 一対一の競争の時代(侵害排除の時代)から、共創(つなぐ、ライセンスによる仲間づくり)になっているとします。
そして、この6つの視点から、この冊子の事例を見ることができるようです。
コメント
- 事業の安全確保
- 創作意欲の向上
- 競争優位性の確保
だと言われたことがあります。
上記の6つの分析では、事業の安全確保というのはないようです。
商標調査などは、事業の安全確保の最たるものです。
ところが、意匠調査や特許調査となると、特許マップは別して、出願の無駄排除、登録の可能性アップとなり、直接的な事業の安全確保ではなくなります。
商標担当者が、使用可能、使用不可と回答するのが一般的ですが、こんな恐ろしい回答をなぜするのかと、意匠の責任者に何回か言われたことがあります。
さて、この昔に言われたものも、それなりに分り易かったのですが、上記の6つの分析は、現代的です。
この分析、使えそうです。
法律は、特許=登録をベースに、侵害排除とライセンスだけでできています。これに対して、実際の世の中ではもう少し複雑に動いています。
この6つの視点の分析は、よく出来ているなと思いました。
なお、冊子には、特許、意匠、商標といったという知財の活用事例が、20社ほど紹介されています。PDFを印刷してみたのですが、ぼやけて見にくいので、印刷版が欲しいところです。
全国の知財総合支援窓口で、印刷したものが入手可能とあります。2020年5月13日の記事なので、まだ、残っているかは不明です。
知的財産を経営に生かす知財活用事例集「Rights」について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)