Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

Rights(その2)

事例1~4、産業財産権専門官まで

昨日ご紹介した「Rights」というタイトルの冊子を見ています。今日は、事例01から04と、産業財産権専門家の座談会まで読みました。

知的財産を経営に生かす知財活用事例集「Rights」について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

 

01 アシザワ・ファインテック株式会社

粉砕機の会社です。

「特許情報分析活用支援制度」を使って、通常の同業他社ではなく、顧客の技術ニューズを発掘した。開発で注力すべき点を明確にするために、特許情報を使った。

特許情報から顧客の製品を整理し、今後取り組み営業先を特定し、新規顧客のニーズをつかんだようです。特許情報は、技術がマッピングされた、重要な営業ツールになるようです。

また、バランスシートに知財を記載し、金融機関から技術的な優位性を理解してもらえた。

 

02 株式会社ピカコ―ポレーション

はしご、脚立の会社。

数年前、他社から意匠権侵害で訴えられた。和解となったが、その間、営業もできず心配した。営業と開発が、知財の重要性を意識した。

弁理士、弁護士から、税関では特許よりも意匠が有効と聞き、特許+意匠を取得ヘ

 

03 株式会社ジンノ工業

プラントの配管の会社。マイクロバブル発生装置を開発。

お客さんの要望を聞き、アイディアが浮かび、そのアイディアの実現手段を特許文献で調べ、それを参考資料に開発スタート。

開発時間、コストをショートカットできた。

愛媛県知財相談総合窓口に相談した。

 

04 株式会社フジワラテクノアート

醸造関連機器の会社。糀づくりを無人化したプラントを販売。

ノウハウと特許の区分けをしている。

産業財産専門官の支援を受け、営業秘密(図形、取引先リスト)の保護のために、情報セキュリティポリシーを制定。客先には図面は見せても、資料は渡さないなど。

全社員を対象に、職務発明規定も制定。イデアの出る会社に。

数字のことを言い過ぎると、遊び心がなくなり、新しい価値を生み出さない。

 

産業財産専門官とは

中小企業の知財担当は少数で、孤軍奮闘。専門家が話を聞くなかで、課題や方針を整理。

 

産業財産権専門官の座談会

特許庁の職員が企業訪問。5名で、年間300社の中小企業訪問。

話を聞き、経営目標に近い、特許、商標、ノウハウ等での保護を提案。

知財活動は、ブランドづくり、社員のモチベーション、営業トークにもなる。

 

というような内容です。

 

コメント

ここまで読んで、特許庁は特許や商標の出願を審査するところだでけはなく、企業の知財部門のようなことをしているんだなということを知りました。

産業財産専門官は、まず、中小企業の話を自ら聞き、それをINPITなどにいる専門家に橋渡しをしているようです。

INPITには、大企業の知財部経験者が沢山、再就職しています。

全体に、大企業のリタイヤ組を活用しているという印象です。

 

特許庁は中小企業支援の方法として、企業の知財部のようなことをやっているんだなと思いました。

 

ただ、この業務は、本来は、国の予算で行うべきではなく、中小企業自らの費用で行うのが、本来ではあります。この点、そこまで特許庁がやってくれるのかという声があるというのは、その意味だと思います。

 

また、特許庁が、無料のコンサルをされると、本来、特許事務所や弁理士がすべき内容を、特許庁が税金を使って行っており、民業圧迫という批判もありえます。

 

また、ただ、特許庁やINPITが努力しても、使える予算には限りがあります。

考え方とすると、中小企業に知財の活用方法を理解してもらうことは、日本にとって非常に重要なことだということですので、その方法が分らない中小企業に対して、特許庁が支援して、成功例をつくり、その成功例を見た、他の中小企業が自ら知財戦略をスタートするきっかけになるというのが、この事業の目的のような気がしました。

  

問題は、弁理士側にもあります。いつまでも、明細書を書くという基本業務にとどまるのではなく、この種のコンサル、分析、業務にシフトすべきでしょう。

弁理士がしっかりしないので、特許庁とINPITの企業出身者が見本を示してくれているということも言えます。