Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

Rights(その6)

13と14(道路建設業とパチンコ部品製造業のコラボ)

 

引き続き、特許庁のRightsを読んでいます。

13は、道路建設業のロードセーフティ株式会社の佐藤社長、

14はパチンコ部品製造業の落合ライト化学株式会社の落合社長です。

そこに愛知県知的財産支援総合窓口の井上さんが入り、3者の鼎談で話が進みます。

知的財産を経営に生かす知財活用事例集「Rights」について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)

all.pdf (jpo.go.jp)

 

佐藤社長の言葉

  • 建設業だから、この規模だから、現場を知っているから取れる特許がある
  • 現場で若手が自分で考えてやっていることにヒントあり
  • 自分で製品を作ってみた
  • 落合社長と出会って、製造について相談できるようになった
  • 特許になるまでの途中で、依頼先の弁理士からきついことを言われ、心が折れた(そのとき、知財支援総合窓口の井上さんが「もうすこしだ」と励ましてくれた)
  • 世の中に役立つという評価
  • 売れるのはその次の段階であり、売れてこそであり、そこは自覚している
  • 特許にするまでの過程に意味がある
  • 本人、従業員の意識改革につながる、技術が培われる。これも特許の効果
  • 相乗効果で本業が引き上げられる
  • 特許商品をつくると、死んでも商品が残る

落合社長の言葉

  • 畑違いの依頼も、出来ないとは言わず、「ちょっと考えてみます」
  • 取引先の課長からの特許は取ってますか?の一言
  • (佐藤社長に勧められ)知的財産支援総合窓口に相談
  • もっと早く出会っていれば、(佐藤社長を)手伝えたのに
  • 特許は従業員のモチベーションを高める(特許証を飾っている)
  • 特許は経営者にしかできない
  • 特許があるというと、全部自分で作ったというと、営業先は前のめりになって話を聞いてくれる
  • 開発着手までは経営者が、大きくするには周りを巻き込む
  • 特許は「V字回復への近道」
  • 一見迂遠だが、低迷から脱する近道

コメント

相当感動ものの記事です。下町ロケットほどのダイナミックさはないですが、いい内容でした。

 

特許の独占排他権などは吹っ飛んでいます。ライセンスでもありません。特許を取ること、それ自体に価値があるという話です。

落合社長は、もともとパチンコ会社と一緒に特許を取ったことがあるので、特許に詳しいのはうなづけるのですが、佐藤社長のバイタリティはすごいなと思います。

 

しかし、知財総合支援窓口の井上さんは良い仕事をしています。

反対に、依頼者の心を折る弁理士の言葉とは、どのようなものだったのでしょうか。

 

よくブランドの世界で、インナーブランディング、インターナルブランディングといった、従業員のモチベーションを高めること大切どと言われますが、特許の取得が従業員のモチベーションを高めることもあるとはあまり気づきませんでした。中小企業で社長が率先垂範すると、この効果が出てくることがある、ということがよくわかりました。

 

インナーブランディングというと、CIツールを整えたり、従業員参画型のイベントを企画したり、自由闊達な風土をつくったり、という人事・総務系の施策になりがちです。

宣伝・広報発信ほどの派手さはないが、モチベーションの向上につながり、一定の効果がでるので、ブランドコンサルからは推奨されます。

 

しかし、お仕着せのインナーブランディング施策は、似たり寄ったりで、従業員の心を打つものではありません。

その点、このお二人、特に門外漢の佐藤社長の行動は、蛮勇にも見えますが、従業員の意識を根本から変えるように思いました。

 

やはり、ブランディング、ブランドづくりは、社長、トップ、経営者が自ら行うものですね。