商標の外内、内外の件数
2021年3月31日付で、特許庁ステータスレポート2021が、特許庁から出ています。
特許庁ステータスレポート2021を取りまとめました (METI/経済産業省)
特許庁ステータスレポート2021 | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
正誤表も出ていますが、特許の部分です。
特許庁ステータスレポート2021 正誤表について | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
とりあえず、PDF版を見ています。
- 特許はこの10年間継続して減り気味
- 実用新案は増加
- 意匠は横ばい(一番、安定しています)
- 商標は少し減り気味です。
28ページあたりですが、商標の件数は、2017年の190,939件が最多で、2019年の190,773件、2018年の184,483件、2020年の181,072件と続きます。
2020年はコロナ禍があったことを考慮すると、まあまあ検討している数字だと思います。
2020年は、全体で、181,072件ですが、国際商標登録出願が17,924件あります。約1割です。それを除くと、通常の商標登録出願は、163,148件となっています。
2020年の商標登録件数は、135,314件です。ここは注目です。
こまでは、2019年のこの数字は、109,859件で、これまでに10万件あたりを10年弱続けていたのが、一気にジャンプアップしています。これは、任期付き審査官や、審査資料の外注化、ファストトラック審査(指定商品役務を分類表から選ぶ方法)の効果が出てきたとみるべきなんだろうと思います。
44ページに、世界の商標登録出願の件数が出ており、ずっと上昇傾向っです。特に、中国が2014年あたりから、一気に出願が加速していることが分ります。
この時期は、中国商標法の第3次改正の時期です。第3次改正は、大成功だったということになります。
米国が中国に次く成長率で、他国も右肩あがりの傾向です。
45ページの日本居住者の海外への商標登録出願件数の推移というグラフは、重要です。
2019年は、130,000件の外国商標登録出願がされています。この数字、10年間では、一番低いは、2010年の102,000件であり、だいたいこの範囲にあります。
28ページを見てください。国内の商標出願件数は、特定出願人の数字を引いても、有意に数字がアップしています。国内の成長は、2015年からスタートしてます。
これに比べて外国への商標出願件数は、アップしていません。
46ページの日本居住者の海外での商標登録件数が、2019年に少しアップしているからなという程度です。
外国出願の奨励がでてきていない点に、日本の現在の商標の問題点がありそうです。特許と比べると、もともと商標は外国も多かったのですが、特許はその後外国出願を増えたのに、商標は増えていない点が問題です。
その他、面白いと思ったのは、29ページの表です。
日本への商標登録出願件数ですが、日本国民の商標登録出願が135,375件で、他国民の商標登録出願が、合計すると44,375件です。
(合計179,750件で、上の統計とは合致しません。何か統計上の理由があるんだろうと思います。)
ちなみに、2020年の通常出願(国際商標登録出願以外の商標)の件数は163,148件ですが、マドプロ経由以外の通常出願での海外からの出願件数は、この44,375件から17,924件を引いた、26,451件になると思います。
日本国民の出願:135,375件(特定出願人を含む)
他国民の出願:44,375件(内、マドプロ出願が17,924件、通常出願が26,451件)
そして、他国民の内訳は、29ページによると、
中国:18,181件(内マドプロ:2,411件)
米国:8,616件(4,097件)
韓国:2,996件(875件)
ドイツ:2,230件(1,951件)
と続きます。
欧州企業は、マドプロで日本に出願しています。米国は、半々です。中国と韓国は、まだ日本への通常出願が多いようです。
今後、長期的な視点でみると、外内は、マドプロ中心の時代になると思います。マドプロでの外内は特許庁の仕事は多いですが、弁理士の仕事にはなりません。
調査、意見書、ライセンス=ノンアサーション=アサインバック=同意書交渉、が重要です。
日本国民のためだけではなく、外国民が日本に出願するときのために、同意書を再度テーブルに載せて検討する時期だろうと思います。
それが長い目でみて、日本の市場の魅力や活性化に繋がるように思います。産業政策としても同意できる内容と思います。
しかし、外国民は、日本では発言権がありません。これを代弁するのが、弁理士の仕事だろうと思います。