Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

コロナワクチンの特許一時放棄

イギリスの意見がないが...

ここ数日、アメリカのバイデン政権が打ち出した特許権放棄について、EU各国の意見が出ていています。 

nishiny.hatenablog.com

●米国の対応については、米英独でワクチン接種が進んでいる中、途上国に対して中国、ロシアへがワクチン外交していることへの危機感などが背景とあります。

ワクチン特許放棄、欧州で温度差: 日本経済新聞 (nikkei.com)

●米国では、民主党バーニー・サンダース上院議員が、特許権の一時放棄に賛成しているとあります。

正義か収益か、特許巡り論争: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

これに対して、欧州の立場が出てきています。

EUのフォンデアライエン欧州委員長:

一定の理解は示すが、特許権の一時放棄は長期的な解決にしかならず、生産国からの輸出が重要と発言。ワクチンの生産には、品質管理や生産技術が重要。

EUは、これまでも2億回分を域外に輸出した。

「米、ワクチン輸出を」: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

●米国は、自分たちへの風当たりが強くなったので、特許権の一時放棄の問題にすり替えたという疑念がある。

●ドイツの報道官:

特許権の一時放棄に反対。ワクチン製造を妨げているのは、生産能力と高い品質水準であって、特許ではない。

ファイザー、モルデナなどの製薬会社も、ドイツと同じ立場。

●フランスは微妙です。

フランスのマクロン大統領:

第一声では、特許権の一時放棄に完全に賛成すると言っていたのですが、

ワクチン特許放棄、欧州で温度差: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

●2021年5月10日の朝日新聞によると、マクロン大統領は、ワクチンの供給増のためには、原材料の流通が必要だが、現在はアングロサクソンが多くを止めていると発言、米英を批判。特許権放棄の優先順位は低いという立場になっています。

 

 

コメント

特許権の一時放棄だけで、ワクチンの供給量が増えるわけではないというのは、その通りだろうと思います。

 

面白いと思ったのは、問題のすり替えという指摘です。

米国が特許権の一時放棄に同意するというは、WTOでのインドと南アフリカの要求に応じるということですが、迅速に安価で大量に供給するというのではなく、特許権の一時放棄に問題をすり替えて、企業の特許の問題にしているといえばそうなります。

 

また、マクロン大統領は、賛成したかと思ったら、特許権放棄の優先順位は低く、原材料を止めているアングロサクソン(米英)が問題と問題をすり替えている感じです。

 

ふと気づいたのは、英国の意見が出ていないという点です。英国にはアストラゼネカがあります。副反応の問題はあるもの、重要な供給ルートです。

なぜ、英国が発言しないのかなと思います。

 

そもそもが、問題のすり替えのような話であり、これに発言しても得るものがないと考えているのでしょうか。

 

アングロサクソンという言葉も注意を引きます。

 

コロナワクチンの件で、国際政治を垣間見た感じです。