Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

法政大学のブランディング

大学憲章

2021年5月11日の日経(夕刊)の「あすへの話題」の欄で、前法政大学総長の田中優子先生が、「ブランディング」について書いておられました。

ブランディング 前法政大学総長 田中優子: 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • ブランドとは何か?ブランドとは大学の「社会との約束である」
  • 約束は、広告に頼るものではなく、教職員自らが創り、受け継いでいくもの
  • 社会から見た法政大学のイメージを基礎資料に
  • アンケート、インタビュー、ワークショップ
  • ワークショップで出てきた言葉を繋げて、「大学憲章」に
  • 大学憲章「自由を生き抜く実践知」
  • 自らの存在理由を考えて、言葉にする

 

関連で、2019年7月1日の日経に、ブランディング・プロセスについて、田中先生の寄稿があります。

法政大のブランド戦略 「社会との約束」全員で作る: 日本経済新聞 (nikkei.com)

  • ブランディング戦略会議。基礎資料を集め分析。学内外でのインタビューや教職員・学生のアンケート

  • ブランディング・プロセスは教職員や卒業生などを中心に全学的に公開(ブランディング・プロセスサイト開設)
  • 言葉をブラッシュ・アップするためのワークショップ
  • 自由な学風、進取の気象、ダイバーシティのある、実践知を結集する
  • 法政大学のブランディングとは、教職員が協力して作ってきた「研究教育理念の柱」
  • ブランディングには終わりがない。憲章ができた直後に全学説明会
  • 「自由を生き抜く実践知」大賞創設
  • 「法政大学憲章」は、各学部、各研究科、3付属校、各部署を結び付ける重要な役割

詳しくは、日経の記事でご確認ください。

 

コメント

法政大学憲章は、次にあります。

法政大学憲章、ミッション・ビジョン、理念・目的 :: 法政大学 (hosei.ac.jp)

 

まず、「約束」(プロミス)として、

「自由を生き抜く実践知」という言葉があります。

その下に憲章の「本文」があります。

歴史を前提に、自由な学風、進取の気象、ダイバーシティのある、実践知を結集するなどの言葉があります。

 

その説明にあたるのでしょうか。大学憲章の下に、ミッション、ビジョンがあります。

自由な学風、進取の気象、ダイバーシティのある、実践知は、バリュー(提供価値、特長のようなもの)だと思いますが、このバリューを、ミッションで説明している感じです。

 

法政大学憲章は、短く分かりやすいですが、説明は長いですね。

 

従来の法政大学のスローガンが「自由と進歩」だったのが、現在は「自由を生き抜く実践知」がキーワードとなっています。「進歩」という言葉よりは、「実践知」は地に足がついて良いなと思いました。「自由」の意味も深くなります。

 

この法政大学憲章は、教職員や卒業生が創ったもので、卒業生については言及があるのですが、一番の顧客ともいえる学生についての言及がありません。

 

学生は教職員になる人もいたり、また卒業生にはなるでしょうが、学生のことを書かないというのは、どういう意図なんでしょうか。大学の場合、学生は教育の対象であり、主体ではないということなんでしょうか。

 

憲章は、憲法みたいなものであり、憲法は国家や地方自治体に適用され、市民に適用されることがないというそんな理屈でしょうか。

 

何はともあれ、法政大学の個性は出ていると思いますので、これは成功している事例だと思います。田中先生の力も大きい感じです。