Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

別姓婚でも婚姻は有効

しかし、戸籍には記載されない

2021年4月21日の日経電子版と、5月8日の日経電子版に、海外で別姓婚で婚姻したカップルについて、婚姻の有効性を認める判決があり、控訴がなかったため、判決が確定したという記事がありました。

夫婦別姓訴訟、戸籍記載認めず 海外婚は「有効」: 日本経済新聞 (nikkei.com)

海外別姓婚「日本で成立」確定 原告控訴せず: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

  • 1997年に米ニューヨーク州で結婚し、別姓のまま婚姻が認められた
  • その後、2018年に婚姻後の夫婦の姓を「夫の姓」と「妻の姓」のいずれにも印を付けた婚姻届を千代田区役所に提出したが不受理
  • 法の適用に関する通則法」に照らし、海外で現地法に基づいて結婚した場合は国内でも婚姻関係が認められる
  • 「婚姻自体は成立していると解するほかない」
  • 別姓のままでは婚姻関係が戸籍に記載されないことについては、「不服があれば家庭裁判所に申し立てる方が有効で適切」
  • 法律婚に当たることの確認を求めた原告側の訴えを不適法だとして却下
  • 海外での別姓婚のカップルについて、国内での婚姻関係を証明する規定が戸籍法にないことについて、立法不作為は違法と評価されるものではないとして、原告の請求(日本でも法律婚に当たることの確認と国家賠償を求めた)を退けた
  • 5月7日に判決が確定
  • 今後は、家裁への申立を検討

とあります。

 

コメント

原告は、法律婚にあたることが認めてもらえたので、判決を確定させたとあり、今後、家裁に戸籍記載がされないことの申立をするとあります。

 

法の適用に関する通則法」は、昔の「法例」ですね。平成18年改正とありますので、2006年です。「法例」という言葉に馴染んでいたので、違和感があります。

 

(婚姻の成立及び方式)
第二十四条 婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
2 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。
3 前項の規定にかかわらず、当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。

 

婚姻の成立と婚姻の方式を分けています。成立は年齢や重婚を防ぐための未婚の証明書とかの条件でしょうか。方式は、日本では婚姻の届出ですが、海外ではだいぶ方式が違うようです。

市長面前での宣誓、役所に出頭、裁判所での手続きと、色々あります。

世界各国の『婚姻の方式』について | 京都の行政書士・みやこ事務所 (miyako-office.net)

米国ラスベガスでの婚姻では、Marriage License Bureauへ新婦と新郎で出かけます。ここで「Marriage License」を取得するとあり、Marriage Licenseは「これから結婚してもいい」という許可書だそうです。

これをもって、牧師さんが式をやって成立とあります。

婚姻届を出すだけじゃないアメリカの結婚。結婚する許可&小さくてもいいので式を挙げる必要アリ (design-penguin.com)

 

今回は、「法の適用に関する通則法からして、婚姻の有効性は否定しようがないので、被告(千代田区でしょうか?国でしょうか?)も控訴しなかったのだろうと思います。

しかし、戸籍への記載がないことには、理屈上は法律婚であっても、色々と不便です。家裁などでも簡単に決着がつくようにも思われません。

 

しかし、夫婦別姓での婚姻も有効であるのは、確かですので、多くの夫婦別姓を求める人が、夫婦別姓を認める海外で挙式して、その数が増えたり、日本の戸籍への記載を求める人が増えると、これを放置もできません。

海外で挙式をするのは、それほど困難ではないので、なかなか進まない夫婦別姓の議論が動きそうに思いました。