「知財の活用」が入っている
2021年5月17日の日経に、金融庁と東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を6月に改定するという記事がありました。
重み増す知財や人権: 日本経済新聞 (nikkei.com)
- キーワードは「脱炭素」「多様性」「知的財産」
- 改定案は3月末に示された
- 独立社外取締役を全体の3分の1以上という国際基準に近づくように求めた
- ひとつめは、脱炭素。欧米機関投資家を考慮
- 2つめは、幹部や中核人材の多様性。管理職への女性や中途採用者の登用。リクルートは派遣社員を含めた人権保護宣言
- 3つめは、「知財の活用」。経営陣に知財戦略の実行をもとめる
- 役員の参加した知財会議。社内連携の知財会議。M&AのためのIPランドスケープなど
- 経営者の感性と覚悟が問われる
とあります。
コメント
最後の「知財の活用」が大きいですね。記事にはナブテスコの事例が紹介されており、知財戦略会議、知財強化委員会などの仕組みが紹介されています。また、知財部門はIPランドスケープで、M&Aなどの情報を経営陣に提供しているとあります。
ナブテスコの取組については、以下の資料がありました。
PowerPoint プレゼンテーション (inpit.go.jp)
役員がでる知財会議や社内連携の知財会議、IPランドスケープのようなことは、以前いた会社では20年ぐらい前からやっていましたので、特に目新しくはありません。
20年前は、各社が知財白書を作る機運もあり、特許庁も後押ししていましたが、今、企業で知財白書を作っているのは、ほとんどありません。ブリヂストンも、2018年で止まっているようです。
知的財産報告書 | 株式会社ブリヂストン (bridgestone.co.jp)
ipr2018.pdf (bridgestone.co.jp)
しかし、今回は東証の基準になるわけですので、ほとんど義務的に、すべての上場企業が知財の活用に配慮しないといけないことになります。
企業でも、このような仕事は、権利取得や侵害対応といった従来からの知財パーソンではなく、技術がよくわかる研究者・技術者が戦略知財担当として来てやっていると思います。その数は、同数ぐらいではないかと思います。
どうしても知財プロパーは、法律面や知財調査手法には詳しいのですが、技術の理解、事業の理解では、技術者の方が上なのかなと、横から見ていて、思ったりしていました(私は商標や意匠でした)。
特許事務所でも従来型の権利取得系の事務所とは別に、戦略知財型の事務所があるのはあるのですが、非常に少数です。
従来型の特許事務所では、企業の戦略知財担当者などに入ってもらい、顔触れを変えないことには、この業務はできないのかもしれません。
会計基準と同様に、これは待ったなしの業務であり、企業としては知見のある外部コンサルの力を使いたいマターです。
特許事務所は、ぼんやりしていると、折角のチャンスを、ビジネスコンサルや会計事務所にとられかねません。何か非常にもったいないですね。