2021年5月17日の日経の「経営の視点」で、欧州もカーボンゼロのためには水素の活用が必要との認識が広がり、三菱重工や旭化成がプロジェクトに参加しているが、水素の優位を守るためには、システム指向の分業体制をグローバルで構築して、核となる技術を守る戦略が必要だという記事がありました。
日本勢、水素の優位保てるか 技術失速の前例断ち切れ: 日本経済新聞 (nikkei.com)
- 燃料電池の関連特許出願数は世界一
- 水素時代にこの優位は保てるのか
- 新技術の導入初期には優位であった日本企業が、普及機に失速する前例
- かつて米国の液晶の知財の9割が日本企業
- 90年台後半に8割の市場シェア
- 2000年台に急速に落ち込み
- DRAM、太陽光パネル、カーナビ、DVDも同様
- 対策は、システム指向の分業体制をグローバルで構築して、核となる技術を守る戦略が必要
- 成功例は、インテルとアップル
コメント
分析は、東大未来ビジョン研究センターの小川紘一シニアリサーチャーの分析です。小川さんは、日立の知的所有権本部長をされていた方ですね。
さて、インテルとアップルが成功例になっています。一般的には、モデルチップのクアルコムも同じだろうと思いますし、アンドロイドのGoogleも似た感じです。
アップルは最終製品がメインで、それを自社ブランドでやっていますが、インテルやクアルコムは、部品・部材の会社です。一般消費者向けの商品ではありません。
自社の商材を絞り込み、自社が担当するところと、台湾や中国メーカーに任せるところを切り分けて、半導体の売り上げと、知財でしっかりと儲けるビジネスモデルです。
Vol.69 記事詳細 | 「知財管理」誌 | 機関誌・資料 | 一般社団法人 日本知的財産協会 (jipa.or.jp)
クアルコムは、もともと携帯電話や通信設備もやっていたようですが、携帯は京セラに、通信設備はエリクソンに売却したようです。
将来性の見極めと、事業の絞り込みと、知財と、大きなエコシステムの構築が必要なようです。
クアルコムは、2014年と少し古いですが、次の論考が参考になりました。東レ経営研究所の永井 知美さんの文章ですが、非常に分り易く、読みやすい文章です。
インテルはまだAMDなどの競合企業もあるので、ブランド構築も必要ですが、クアルコムは独自の地位を築いているので、一般へのブランド認知が低くても支障ありません。
電機の失敗・反省点は沢山あるでしょうから、それを参考にして、水素や自動車で上手く行けばよいと思いますが、知財領域では電機が一番競争が激烈なところでしたので、この電機の知財人材の活用は、他の産業の鍵になるように思います。
知財パーソンは、永井さんの論考や二又さんの知財管理の連載を見て、クアルコム研究から始めてはどうかと思いました。