Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

コロナ変異株の名称

国名表記からギリシャ語のアルファベットへ

2021年6月2日の朝日新聞に、新型コロナウィルスの国名表記の変異株の名称が、国名の表記から、ギリシャ語のアルファベット表記になるという話が載っていました。

 

  • WHOは、英国株、インド株といった国名の表記を見直し、ギリシャ語のアルファベットとする
  • 差別や偏見を回避し、議論をやすくする
  • 各国やメディアに新名称の採用を推奨
  • 英国:アルファ
  • 南アフリカ:ベータ
  • ブラジル:ガンマ
  • インド:デルタ

となっています。

 

WHOのページに、説明があります。

WHO announces simple, easy-to-say labels for SARS-CoV-2 Variants of Interest and Concern

科学的な表現は、思い出しにくく、誤報が発生しやすく、汚名と差別の原因になるとあります。

 

既に、命名の具体的なところは、以下のページです。

SARS-CoV-2バリアントの追跡 (who.int)

アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ以外に、カッパまであるようです。

 

コメント

The Guardianに関連記事がありました。

Covid-19 variants to be given Greek alphabet names to avoid stigma | Coronavirus | The Guardian

検討中には、ギリシャの神様の名前にする案もあったそうです。

科学的な表現は、思い出しにくく、誤報が発生しやすいので、発生した場所の名前に頼ってしまうようですが、1918年にスペイン風邪も、正確な発生地は分からないなど問題があるようです。

 

また、インドではインド政府がSNSプラットフォームに対して、インド株という名称使用を禁止したり、

アメリカでは、トランプ元大統領の「中国ウイルス」という発言が、アジア系アメリカ人に対する攻撃につながっており、ヘイトクライム防止法が必要な事態になっています。

 

今回のものは、商標ではなく、ウイルスの変異株の通称、俗称についての話ですが、確かに、英国やインドに対する「汚名や差別」の要因にはなっているようですので、変更することは良いことではないかと思います。

 

ただ、ギリシャ語のアルファベットが覚えやすいのかという問題はあります。

 

近い種類の話としては、台風の名称があり、英式の女性の人名が使われてきましたが、それが男女名となり、今は、人名ではないアジア式の別の名称(神様の名前、動物の名前などの各国の色々な名称)を使用するルールになったようです。

台風の名前 - Wikipedia

 

コロナの変異株も、台風も、対象が商品やサービスではないので、商標とは違いますが、どちらにしても、他国、他人への配慮といったものが必要なようです。

 

ネーミングは身近なものであり、影響が大きいものだけに、人権的な配慮が、ますます求めらるようになってきている感じがします。

 

なお、WHOもThe Guardianも、stigmatizing and discriminatory「汚名と差別」としているのが、朝日新聞では「差別と偏見」となっています。

「偏見」は「偏った見方、非好意的な先入観や判断」を言いますので、「汚名」の方が今回は、良いのではないかと思いました。

差別と偏見はセットで使いたくなるのはわかりますが、ちょっと違うように思います。