Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

教員の育児漫画出版

兼業の不許可?

2021年6月2日の朝日新聞に、都立高校の教員が、育児参加を促す漫画を出版しようとして、東京都に兼業申請を出したところ、理由を示さずに不許可になり、その取消を求めれる訴えを提起したという記事がありました。

  • 「パパ頭(あたま)」という名前で投稿
  • フォロワーは8万8千人
  • 2020年3月出版社から書籍化を打診
  • 兼業許可の申請
  • 校長は「許可相当」
  • 東京都教育委員会が不許可。理由は明示されず
  • 2020年11月に再申請
  • 口頭で不許可
  • 2021年2月に、都人事委員会に不許可処分を不服とした再審査請求
  • 2021年5月に提訴
  • 総務省は公務以外も活躍を期待

とあります。

 

コメント

ツイッターで、「パパ頭」で検索すると漫画が見れます。

パパ頭さん (@nonnyakonyako) / Twitter

 

教科書執筆や講演会の講師は、許可される兼業の代表例であり、許可されないのは予備校や塾での受験指導とあります。

 

予備校や塾が禁止されているのは、その学校を受験しようとする学生を指導し、入試で有利に働くようにすることを防止するためだそうですが、その理由なら高校教諭が大学受験の予備校で講師をするのは、OKとなるばずです。

本業の執行に支障があるというのが、予備校講師をNGとする本当の理由なのでしょうか。

 

それはさておき、夫の育児の重要性が叫ばれる中で、この育児漫画の出版をNGとするのは、ちょっとどうかと思います。

 

同じ教員でも大学教員の場合、出版できないなんて考えられませんし、漫画だからダメというのも時代遅れです。

都への再審査請求もやっているようですので、それが認めらてもおかしくないのではないでしょうか。

 

なぜ、東京都教育委員会がNGというのでしょうか。今回は、育児漫画でありNGとしにくい内容だろうと思いますが、これをOKとすると、今後漫画を出版したいという申請はOKとなると思います。

育児漫画がOKで、例えば少年漫画や同人誌漫画がNGというと、表現の自由と抵触します。この判断を避けるためには、一律NGとして置くのが楽です。

 

このあたり、一律NGとするか、一律OKとするか、いずれか一つしかありません。もし、一律OKとすると、東京都の教員がこんな漫画を出しているという話になりかねないので、一律NGしかない。

 

事前チェックの最たるものですね。社会常識からしても、厳しすぎるように思います。また、原則的には、兼業禁止で許可がでないことには出版ができません。

東京都は、今回の書籍が、ハンドルネームのまま、勝手に出版され、兼業申請もなければ、おそらく黙認していたのではないかとも思われます。

 

時代は変化しているので、東京都も考え方を変え、性善説に立って、問題があるものを事後的に排除する時代に切り替えないといけないように思います。

 

6月16日に商標協会の実務検討部会の「コンセント制度」のパネルディスカッションにパネラーとして参加することになりました。類似関係の審査制度は、欧州を見てわかるように大きく変化する時期です。商号では、類似商号の審査はなくなりましたが、大きな問題にはなっていません。役所にあまり負担をかけず、性善説と事後チェックが、大きな流れだろうと思います。