Nishinyの商標・ブランド日記

商標・ブランドの情報です。弁理士の西野吉徳のブログです。

日本ヤフー株の売却

米アルタバが4800億円で売却

2018年9月11日の日経に、米アルタバが日本のヤフー株をすべて売却するという記事がありました。

www.nikkei.com

  • 米ヤフーは、2017年にポータルサイト事業を、ベライゾン・コニュニケーションズに売却。社名をアルタバに変更
  • 今回は、保有する日本のヤフー株をすべて売却
  • アルタバの持ち分は、ヤフー株の27%で、ソフトバンクグループに次ぐ第2位
  • 約4800億円
  • アルタバは、他にアリババ集団の株式を保有

というような内容です。

 

コメント

2018年9月13日の日経電子版で、売却先の情報が出ていました。海外の投資家が積極的に日本のヤフー株を買っているようです。

www.nikkei.com

この記事によると、購入した海外投資家は

  • ヤフーの既存株主
  • 政府系ファンド(SWF
  • ロングオンリーの機関投資家
  • プライベートオフィス
  • ヘッジファンドなど、およそ150を超える投資家。米国勢が55%を占めた

ということです。

 

このときに、ソフトバンクグループがどのように、ヤフー株を買ったかは情報がありません。

 

それ以前の段階では、既に、アルタバが約10%のヤフー株を2000億円で売却し、ソフトバンクが引き受け、替わりにヤフーがソフトバンクグループの持ち分のヤフー株株式を約2000億円分、自社株買いしたとあります。

複雑な取引ですが、もともと、43%だった、ソフトバンクグループ全体の、ヤフー株の持ち分比率は変わっていないようです。

www.nikkei.com

 

正確には、約2200億円だそうです。

アルタバは4~6月にかけて保有するヤフー株の一部を市場で売却し、ヤフーの株価が低迷。ヤフーは8月、親会社ソフトバンクグループの通信子会社を通じて約2200億円の自社株買いを実施し、株価の下落にいったん歯止めがかかっていた

www.nikkei.com

 

さて、本題なのですが、Global Brand Databaseで調べると、米国の権利者は、デラウェア州のOATH INC. Corporation となっています。

 

Wikipediaによると、この会社は、ベライゾン・コミュニケーションズの傘下企業で、YahooとAOLを傘下に持ち、2つのブランドを維持して、事業を行っているとあります。

Oath Inc. - Wikipedia

 

一方、日本では、Yahoo! の権利者は、ヤフー!インコーポレーテッドとありますので、アルタバのことでしょう。

アルタバとしては、株式を売却して売却益を得て、その上、まだ、商標権を保有し続けて、商標使用料を取っていこうという算段なのでしょうか?そうなら、2重どりのような気がします。

 

ベライゾン(子会社)のOATH INC. Corporation が、日本のYahoo!株を持っているなら、事業をやっているYahoo!に対してブランド使用料(ロイヤルティ)を支払うことになりますので、理解できます。

しかし、単なる投資会社のアルタバが権利者では、サービスのビジネスモデルの提供やサービス品質管理といったクオリティコントロールは、できません。米国的に考えると、商標ライセンスの基礎としての品質管理がなく、naked lisenceとして、権利が無効になりそうです。

そこまで争わなくても、ライセンスの対価は、あっても権利維持手数料見合いの微々たるものと主張できそうです。

 

日本の場合、ライセンスの考え方が発達しておらず、紙切れの権利も権利と見る傾向がありますので、アルタバに商標使用料(ロイヤルティ)の支払いが必要なように思いますが、品質指導や品質管理を前提に契約をしていれば、それがなければ、使用料の低減交渉は合理的です。契約次第ですが。

 

ちなみに、彼らはアメリカでの使用はありませんが、日本では、日本のヤフーの使用が彼らの使用になるので、不使用取消は、困難です。

 

日本のヤフーとしては、日本のヤフーの株式の問題もありますが、日本におけるYahoo!商標の商標権を買い取ることを検討することが必要なように思いました。